心を、何らかの形で表してくれることを待ち望みます
私たちの息子・丈裕は、1996年千葉大学教育学部に入学し、念願だった教師への道を目指して第一歩を踏み出しました。そして、その10日後にオリエンテーリング部新入生勧誘コンパで、二十歳の人生を奪われてしまいました。
亡くなった日も、息子はいつもと変わりなく家を出て行きました。まさか急性アルコール中毒で死んで帰ってくるなんて、まだどうしても信じられません。
何事にも慎重であった息子が、いったい何故? (救急医療センターで調べた息子の血中アルコール濃度は、0.45%でした。これは致死量を超えており、ふつうに飲んで飲める量ではありません)
事実を知りたくても出席したのが新入生歓迎コンパではなく「勧誘コンパ」であったため、コンパに同席していた学生たちの名前もわからず、状況もつかめません。
千葉大学では、前年(1995年)に瀕死の飲酒事故(死には至らず植物状態であるらしい)が起き、「飲酒を強要した学生に、退学、停学を含む処分を行なう方針」との学長通達が出されていました。私たちは8日の入学式でこの学長通達の話を聞いており、安心していた矢先、10日後の息子の死でした。
にもかかわらず大学は事実を隠し、その原因追求もせずに処分を発表しました。
○ 春祭の中止
○ オリエンテーリング部の半年間の正式活動の中止
関係学生の退学、停学といったものはありませんでした。大学の報告書には、「個人の飲みすぎによる死亡」と書かれていました。息子の大切な命が奪われているのに、こんな形では納得がいきません。
いったい、何があったのか。
責任の所在をはっきりさせて欲しい。
子どもを亡くして身も心も引き裂かれる状態であるのに、親が調べなければ真実はわからないなんて、このままでは息子が可哀相すぎる。
コンパは大学近くの居酒屋で始まり、顧問教授と部長を除く新入生30人余りを含む90人の学生が参加。1次会はビール200本、2次会は場を変えて約60人(新入生25人)が参加し、焼酎700ml入り12本。息子は2次会の途中で倒れ、一度は吐かせるために連れ出されたが吐くことができず、横に寝かされていたそうです。昏睡状態の息子の横で、先輩たちは飲みつづけ、彼らが気づいた時には脈もなく、それから救急車を呼んだという対応の悪さです。
大学側が関係学生の口を封じているので、なかなか真実が得られません。しかし調べていくうちに少しずつ状況が見えてくる。
割らない焼酎を飲まされていたという。イッキ飲みをしていたという学生も何人か出てきた。勧誘コンパであるのに自分たちも酔ってしまって、気がつかなかったという。
息子のほかに倒れている新入生が5、6人いたのだから、いつ誰が犠牲になってもおかしくなかったのだ……。
副学長からは、「今年は学長通達により、学生寮は厳しく取り締まったが、課外活動にまでは目が届かなかった」と言われました。後で言われても悔しいかぎりです。
将来の夢と希望に満ちあふれ、前向きに懸命に生きてきた息子、その無念を思うにつけ、このままでは済ましたくない、また済まされません。
救急車を呼んだ時、すでに息がなかったというような悲劇は、もう繰り返したくはありません。
当時の学長、副学長をはじめ、学生課長、顧問教授の社会に納得のいく心を期待しております。
また、当事者である先輩学生の反省の心を待っています。
私たちは、何らかの形で表わしてくれることを待ち望みます。
そして、イッキ飲み防止連絡協議会を設立された加来様はじめ、多くの方のご努力が無にならないように願っています。