アルコール・薬物・その他の依存問題を予防し、回復を応援する社会を作るNPO法人「ASK(アスク)」の情報発信サイト

ASKの活動

提言

世界の国々のアルコール政策には、A.禁酒、B.国による生産・価格・販売管理、C.一定の社会規制と予防のための教育啓発、D.野放し(経済優先)の4種類があり、大多数の先進国がCに属しています。医学的に見て、アルコールには依存性・致酔性(中枢神経抑制)・臓器毒性・発がん性・催奇性があり、飲み方によっては健康障害や事故・犯罪を引き起こすリスクが高いからです。
ASKが設立された1980年代、日本はDに属していました。
日本の軸足をCに移行させるため、ASKは今日まで粘り強く働きかけを続けてきました。

主な「提言」活動

ASK設立の翌年に行なったアルコール飲料の「キャラクター商法」への抗議は、メーカーを動かし、やがて企業内にアルコール問題を扱う部署が設置されるきっかけとなりました。
以来、酒類自販機・イッキ飲み・FAS・飲酒運転・依存症の早期発見と介入など、そのときどきの焦点となった問題について、酒類業界や関係省庁などに申し入れや要望を行ない、成果を上げてきました。

1.酒類業界への提言

●酒類自動販売機撤廃 1984~2000年
未成年者飲酒禁止法があるのに、なぜ路上にある自動販売機で24時間、年齢確認なしに酒類を販売できるのか。
撤廃を求める署名運動(1989年)、はみ出し自販機調査(1990年/酒類自販機の7割が道路にはみ出していた)、撤廃の要望(1985・1990・1992・1993・1994・1996・1998・1999年)を積み重ねた。
1991年に東京で開催されたWHOアルコール部会で禁止勧告が出されたのを契機に事態は急転。
ビール酒造組合が自販機斡旋を中止し、全国小売酒販組合中央会も現行自販機の2000年撤去を決議。

●CMの自主規制 1984年~
中・高生の飲酒実態調査を発端に、1984年、未成年者にアピールするキャラクターを使ったCMと景品(いわゆるキャラクター商法)の自粛を酒類メーカーに要請。
以後、イッキ飲みや多量飲酒、性的アピール、依存症を想起させるCMなどについても問題を指摘し続ける中、大手メーカーの意識が徐々に変化。
1988年にCMの自主基準が策定され、1991年以降、大手各社ではアルコール問題を扱う専門部署を置くようになっていった。
1990年と2009年には、テレビCMの大規模調査を行ない、関係省庁にも規制強化を要請。
「アルコール健康障害対策基本法」施行後、2014年に招集された関係者会議でも話し合いを続行。酒類業界はプロジェクトチームを設けて海外視察を実施し、2016年、自主基準を改定。欧米の流れに合わせて、CMの登場人物の年齢を「25歳以上」に引き上げること、喉元アップの描写と喉元を通る「ゴクゴク」「グビグビ」「ゴックン」等の効果音は使用しないことが決定した。
全車両貸切広告(1994年)に始まったインパクトを狙う「強制視認」の交通広告は、自動改札機ステッカー(1999年)、ウィンドービジョン(1999年)、車体広告(2003年)、駅構内の柱巻き(2004年)と展開。問題を指摘し続けた結果、2005年に自主基準設定へ。
インターネット広告についても、Yahooトップインパクト広告(2015年)、ウェブアニメ(2016年)と新たな展開が始まり、自主基準の策定を要請。

●表示の自主規制 1999年~
清涼飲料と紛らわしい低アルコールリキュール類について、表示の改善を求めて業界団体や国税庁・消費者庁などに要望(1999・2000・2001・2002・2007・2010年)。その結果、洋酒酒造組合が2000年に「酒マーク」の表示を決める。その後、業界全体で、アルコール分10度未満の酒類の容器には「酒マーク」を表示することになった。
2012年には、「ノンアルコール」の表示についても要望、自主基準が策定された。
2004年、妊産婦向け警告表示を要望。ビール酒造組合が「妊娠中や授乳期の飲酒は、胎児・乳児の発育に悪影響を与えるおそれがあります」と容器に記載することを決定し、業界全体に広まった。2010年からはテレビCMにも同様の警告表示が入った。

2.その他の提言

●未成年飲酒・イッキ飲み防止
1986年、中高生の飲酒実態調査をもとに、アルコール予防教育を小・中・高で実施するよう文部省に要望。1989年に高校の保健体育、1998年に中学の保健体育と小学校の体育に、飲酒・喫煙・薬物乱用防止が組み入れられた。
1992年、「イッキ飲み被害110番」の結果を踏まえ、全国の大学に防止対策を要望。以後、ポスター・チラシと共に毎年、イッキ飲みとアルコール・ハラスメントの防止対策を求める要望書を送付。
酒類自動販売機の撤廃は進んだものの、規制緩和により小売酒販免許が徐々に自由化されていたため、2000年、法改正も含む総合的な未成年者飲酒防止対策を関係省庁に要望。未成年者飲酒禁止法が1999年~2001年に相次いで改正。
2015年、成人年齢引き下げに連動させ「飲酒・喫煙・公営競技の可能年齢を18歳に引き下げる」案につき、タバコ・ギャンブルの関連団体と連携して、自民党の特命委員会と関連省庁等に反対の申し入れ。医師会などの反対もありひとまず取り下げに。

●妊産婦の飲酒防止
2003年、ASKが開催した妊娠とアルコールに関する国際シンポジウムにもとづき、産婦人科学会の協力も得て「予防のメッセージ」を作成。2004年、関係省庁や関係団体に対策を要望。
酒類の容器への警告表示の実施、母子健康手帳の文言の改定や情報提供などが行なわれた。その効果あってか、女性全体での飲酒率は上昇したにもかかわらず、妊娠中の飲酒率は低下した。

●飲酒運転防止
飲酒運転を防ぐため、背景にあるアルコール問題への対策を、関係省庁や運輸業界に要望(2002・2003・2006・2008・2013年)。
2008年には「飲酒運転防止インストラクター養成講座」を開講し、関係省庁と関係団体に協力を依頼。

●基本法制定
2010年に出されたWHOの「アルコールの有害な使用を低減するための世界戦略」を受けて2011年、多量飲酒やアルコール依存症の早期発見・介入に主眼を置いた総合的なアルコール対策を、厚生労働省に要望。
2012年、関係学会・自助グループとともに「アル法ネット」を結成。発生・進行・再発防止の総合施策を実現する立法化のため超党派アルコール問題議員連盟に協力を要請。議連の尽力により、2013年、「アルコール健康障害対策基本法」が全会一致で成立。2014年以降はASK代表が関係者会議の委員として国の基本計画策定(2016年)に当たる。

●依存症偏見是正
2016年、アルコール・薬物・ギャンブル依存症問題に取り組む団体と専門家が「依存症問題の正しい報道を求めるネットワーク」を発足。偏見をあおらないよう配慮を求める文書を報道関係者各位に提出。2017年には薬物報道ガイドラインを発表。