調査結果から、自殺の背景にあるアルコール問題の存在が浮かび上がってきた。
これは特に中年男性に目立つ傾向で、自殺が増加している層と一致する。
国立精神・神経センター精神保健研究所「自殺予防総合対策センター」心理学的剖検(※)の手法による「自殺予防と遺族支援のための基礎調査」(平成19年度~21年度)。
※心理学的剖検=一般に剖検とは病理解剖を指すが、1950年代から、不審死を遂げた人の家族などへの面接により自然死・事故死・自殺・他殺を心理学的に解明する「心理学的剖検」の試みが始まった。現在は自殺の背景を探る手法として各国で活用されている。
●「自殺で亡くなる前の1年間に、何らかのアルコール関連問題を抱えていた」人(アルコール問題群)は21.1%。
●問題群は「40~50代の男性有職者」が中心。
●問題群では月平均で約25日飲酒し、1回の飲酒量は日本酒換算で約3.6合。
●問題群の81.2%がアルコール依存もしくは乱用にあてはまる。
(ご遺族からの情報をもとにDSM‐Ⅳ<アメリカ精神医学会の診断基準四版>に照らした結果)
●問題群では、死亡時になんらかの精神疾患を抱えていたと推測される人が100%。
平均二つの精神疾患を合併しており、アルコール使用障害と気分障害、なかでもうつ病との合併が最も多く確認された。
●事例からは、アルコール依存からうつ病を発症したと考えられるケースと、うつ病の症状への対処としてアルコール関連問題を呈したケースの、2つのパターンが見られた。
●問題群のおよそ半数が身体の不調などで医師や他の専門家にかかっており、43.8%はうつ病などでの精神科受診歴があった。
しかしアルコール関連問題について精神医学的治療や支援を受けていた事例は皆無だった。
アルコール依存症は、治療・援助を受けて回復することが可能です。
けれどわが国では、この病気についての誤解や偏見が根強いため、よかれと思っての対応が病気を悪化させてしまうことがよくあります。そこで・・・
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