アルコール・薬物・その他の依存問題を予防し、回復を応援する社会を作るNPO法人「ASK(アスク)」の情報発信サイト

依存症って何?

ASK依存症予防教育アドバイザー養成講座とは

1.事業の目的

背景

アルコール・薬物・ギャンブルは、私たちのすぐ身近にあります。しかし日本では、リスクが正しく認識されておらず、依存症が回復できる病気との認識もほとんどありません。
この状況を変えるため、2013年にアルコール健康障害対策基本法、2018年にギャンブル依存症等対策基本法が成立。厚生労働省は依存症対策推進本部を設け、アルコール健康障害・薬物依存症・ギャンブル等依存症の予防啓発を行なうとともに、相談拠点・専門医療機関の整備等の地域支援対策に踏み出しました。
いま必要なのは、地域で依存症の予防を進めるとともに、日本社会に根強い誤解や偏見を取り除いて、回復を応援する社会をつくっていく人材の育成です。

目的

当事業は、私たちのすぐ身近にあるアルコール健康障害・薬物依存症・ギャンブル依存症等の「正しい知識」と「回復の実感」、予防に必須の「ライフスキル」を伝える人材を養成することを目的にしています。
とくに、依存症の回復に確かな実感を持った「当事者・家族・支援者」が予防の専門家である「依存症予防教育アドバイザー」となり、活躍していくことを後押ししたいと考えます。

2024年度養成講座も無料で実施

2024年度養成講座は厚生労働省「令和6年度 依存症民間団体支援事業」の補助金を受けており、受講は無料です。また、新生会病院・和気隆三名誉院長からのご寄付を、大学への講師派遣の補助に使わせていただいています。
厚生労働省「依存症対策」
医療法人和気会 新生会病院

過去の養成講座

これまでの養成講座のもようはこちらでまとめてあります。
実施報告

2.ASKの予防教育<正しい知識 & 回復の実感 & ライフスキル>

プログラム開発の歴史

ASKが予防教育に取り組み始めたのは1984年。中・高生の飲酒実態調査を行ない、その分析をもとに、アルコール予防教育の出張講座を開始しました。その後オーストラリアのLife Educationを視察、2000年にライフスキルを合わせたプログラムの原型ができました。

ライフスキルとは?

ライフスキルとは、「日常生活で生じるさまざまな問題や要求に対して、建設的かつ効果的に対処するために必要な心理社会的能力」のことで、1994年にWHOがガイドラインを作成。海外では学校でライフスキル教育が盛んに行なわれています。
詳しくはこちら「ライフスキル」
予防教育にはライフスキルが欠かせません。
依存症はつらい状態への自己治療の側面をもちますので、予防のためには健康的な「感情対処」「ストレス対処」のスキルを知ることが必要です。また、仲間の圧力から身を守るには「批判的思考」「意志決定スキル」「コミュニケーションスキル」などが必要です。
これらのスキルは、予防だけでなく、依存症からの回復にも役立ちます。

プログラム検討委員会による全面改訂

ASKでは2018年度、厚生労働省の「依存症民間団体支援事業費補助金」を受け、プログラム検討委員会を設置。ギャンブル依存症当事者・家族からヒアリングを行なって新たにギャンブルのユニットを加えるとともに、依存性薬物とライフスキルのユニットを拡充するなど、プログラムと教材の全面改訂を行ないました。なお、新たなプログラムは大学など数ヵ所で実施し、効果測定を行なっています。

【プログラム検討委員会】

    •  松本 俊彦 (国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所・薬物依存研究部部長)
    •  田中 紀子 (ギャンブル依存症問題を考える会代表)
    •  近藤 京子 (一般社団法人オンブレ・ジャパン代表・予防教育プランナー)
    •  中野 満知子(アサーティブジャパン認定講師・オフィス「想」ネットワーク主宰)
    •  稗田 里香 (武蔵野大学教授・ASK副代表・アルコール健康障害対策関係者会議委員)
    •  今成 知美 (ASK代表・アルコール健康障害対策関係者会議委員)

2020年度には、依存症予防教育アドバイザーによる「ASKゲーム依存特別委員会」が、ゲーム依存のユニット作成に取り組みました。また2021年度には、特定非営利活動法人アサーティブジャパンの協力を得て、オンラインでも実施できるよう、ライフスキルのロールプレイを動画化しました。

依存症予防教育<8つのユニット>

ASKの依存症予防教育は、<正しい知識 & 回復の実感 & ライフスキル>で構成されており、以下の8つのユニットがあります。対象者やニーズ、時間に合わせ、ユニットを自由に組み合わせることができ、それぞれパワーポイント教材が用意されています。
正しい知識
「①アルコール」
「②依存性薬物」
「③ギャンブル」
「⑧オンラインゲーム」※保護者版にロールプレイ動画入り
回復の実感
「④依存症へのプロセスと回復(3つの顔を使って)」
※回復者の方はここで体験談を話すこともできます
ライフスキル
「⑤感情対処(3つの顔を使って)」
「⑥仲間の圧力から身を守る」※ロールプレイ動画入り
「⑦関係をこわさないNO!」※ロールプレイ動画入り

予想される予防啓発の対象

大学・専門学校(医学・看護・福祉・介護・薬学・教育など関連分野の学生を重視)
小・中・高(定時制高校を含む)
保護者・教育関係者・一般市民
DV・虐待・一人親家庭支援者、司法・矯正関係者
自殺対策関係者
少年院
依存症当事者・家族・支援者
職場(新人研修・管理職研修)など

本事業がめざすトリプル効果

予防啓発と、回復を応援する社会づくり(偏見是正)を同時に!

依存症当事者・家族、支援者が講師になることによって、回復の実感が伝わり、より効果的に偏見是正が進むでしょう。
また、当事者・家族が予防の専門家としての資格をもつことで、地域で活躍する機会が得やすくなるよう願っています。

問題があっても生きていける力を伝える!

知識だけでなく、感情対処・意志決定・コミュニケーションスキルなど、メンタルヘルス全般に役立つライフスキルを伝えます。
人生の荒波を越えて回復してきた当事者・家族との出会いを通し、何があっても生きていけるというメッセージも伝えていきたいと思います。

予防だけでなく、回復にも役立つライフスキル!

前述したように、ライフスキルは依存症の予防だけでなく、回復にも役立ちます。
講師となる当事者・家族・支援者にとって、回復支援の新たなツールにもなるでしょう。