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アルコール関連問題

アルコール対策の基本理念を示し、国や地方公共団体などの責務を定めたのが「アルコール健康障害対策基本法」です。
アルコール健康障害対策基本法とは図解
その内容について、Q&Aで見ていきましょう。

Q 「アルコール健康障害」って何?

「不適切な飲酒の影響による心身の健康障害」のことです。
アルコール依存症、そのほか多量飲酒によるさまざまな健康障害、未成年者の飲酒・妊婦の飲酒による心身の健康障害なども含まれます。
ちなみに「不適切な飲酒」には、過剰な習慣飲酒、ビンジドリンキング(どか飲み)、飲んではいけない条件下での飲酒(20歳未満・妊娠中・薬の服用中など)が含まれるとされます。

Q 基本法が扱うのは「健康」の問題だけ?

いいえ。アルコールに関連して生じる、飲酒運転、暴力、虐待、自殺等も含まれます。
また、本人だけでなく家族も施策の対象です。
基本法の冒頭に「不適切な飲酒は……本人の健康の問題であるのみならず、その家族への深刻な影響や重大な社会問題を生じさせる危険性が高い」(第一条)とあり、基本理念にも「飲酒運転・暴力・虐待・自殺等の問題……に関する施策との有機的な連携
(第三条 二)の必要性がうたわれています。

Q 健康障害については、何をする?

「発生、進行及び再発の各段階に応じた防止対策」を実施すると基本理念にあります。
これはまさにASKが推進してきた、一次予防・二次予防・三次予防にあたります。
この3つは一般に、次のようなことをさします。

発生の防止=予防教育や社会規制など

進行の防止=早期発見・介入のシステム作りなど

再発の防止=回復後の社会復帰支援など

こうした対策を適切に実施するとともに、当事者と家族が「日常生活及び社会生活を円滑に営むことができるように支援する」としています。
(以上、第三条 一)

Q どんな責務が定められている?

国・地方公共団体・事業者・国民・医師等・健康増進事業実施者の責務を規定しています。
このうち、国の責務は総合的な対策の策定と実施。地方公共団体の責務は、国と連携しつつ、地域の状況に応じた施策を策定・実施することです。
事業者については、この法律で広告・宣伝等の規制には踏み込まない代わりに、国や自治体の対策に「協力」することや、アルコール健康障害の防止に「配慮するよう努める」ことを責務として定めています。
(以上、第四条~九条)

Q 対策には、どんな分野・場面が関係する?

第三章では次の10の分野の基本的施策を挙げています。
●教育の振興等
家庭・学校・職場などでの予防教育や広報活動です。
●不適切な飲酒の誘因の防止
酒類の表示・広告や販売方法のことです。自主規制による努力を促しています。
●健康診断及び保健指導
早期発見で重要な役目を担います。産業医、保健師、管理栄養士らに期待する分野です。
●アルコール健康障害に係る医療の充実等
節酒・断酒の指導と専門治療の紹介/依存症の専門治療とリハビリテーションの充実/専門治療機関と一般医療機関との連携――の三点が挙げられています。
●飲酒運転者等への指導
飲酒運転のほか、暴力・虐待・自殺未遂などをした人への指導・助言・支援です。警察・司法との連携がポイント。
●相談支援等
当事者や家族の相談支援です。相談の受け皿を増やすことや、相談しやすい体制の整備が欠かせません。別の問題の陰に隠れた飲酒問題の発見も大事。
●社会復帰の支援
依存症回復者の社会復帰のため、就労支援の推進などが挙げられています。
●民間団体の活動支援
自助グループ、その他民間団体の活動への支援です。
●人材の確保等
医療、保健、福祉、教育、矯正などの分野で、アルコール関連問題に対応できる人材の、確保・養成・資質向上のための施策を講ずるとしています。
●調査研究の推進等
健康障害の発生・進行・再発の研究、治療法の研究、関連問題の実態調査などです。
「アルコール健康障害対策推進基本計画」全文はこちら(厚生労働省のホームページ)

この基本法によって、具体的に、何がどのように行われるのでしょうか。
引き続きQ&Aでみていきましょう。

Q 国の対策はどのように具体化される?

基本的施策を具体化するため、2016年5月に「アルコール健康障害対策推進基本計画」が閣議決定されました。
この基本計画の作成にあたっては、専門家・当事者・家族らで構成された「関係者会議」が綿密な議論を積み重ねています。2014年10月から16年2月までの間にワーキンググループを含めて計26回も開催されるという、この手の会議ではおそらく例をみない濃密なやりとりでした。
「基本計画」では、次の2つを重点課題としています。
1 飲酒に伴うリスクに関する知識の普及を徹底し、将来にわたるアルコール健康障害の発生を予防
2 アルコール健康障害に関する予防及び相談から治療・回復支援に至る切れ目のない支援体制の整備
その上で、基本法の第三条の10分野それぞれにつき、施策を挙げています。
「第1期アルコール健康障害対策推進基本計画」全文はこちら(厚生労働省のホームページ)
「第2期アルコール健康障害対策推進基本計画」全文はこちら(厚生労働省のホームページ)

Q 自治体の対策はどうやって決めるの?

この「基本計画」をモデルとして、各都道府県や指定都市ごとに地域の状況に合わせた「アルコール健康障害対策推進計画」を定めることとされており、基本計画では全都道府県が平成32年度までに推進計画を策定することを目標としています。
推進計画の策定にあたっては、専門家・当事者・家族などによる会議を開いて意見を聴くことが重要とされています。
都道府県と指定都市の「アルコール健康障害対策推進計画」策定状況はこちら(アル法ネットのホームページ)

Q アルコール以外の依存症対策は?

平成28年末、厚生労働省に「依存症対策推進本部」が設置されました。
アルコール健康障害対策・薬物依存症対策・ギャンブル依存症対策の3チームで構成されています。
平成29年4月からこの3分野にまたがる「依存症対策総合支援事業実施要綱」が適用となりましたが、ここには治療拠点や相談拠点の整備、地域の計画策定、支援者研修などが詳細に定められています。
まさに、アルコールの基本計画の実施手順であり、それを薬物・ギャンブルにも広げたものです。
「依存症対策総合支援事業実施要綱」の概要はこちら
「依存症対策総合支援事業実施要綱」の全文はこちら(厚生労働省:PDFファイル)
「依存症対策全国センター」のサイトはこちら