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ギャンブル依存

調査/データ

日本はギャンブル大国だった?

諸外国と比較すると……

「ギャンブル依存症が疑われる者、320万人」
2017年9月、久里浜医療センターの研究グループによる全国調査の中間とりまとめが発表され、各紙で大きく報じられました。スクリーニングテストの結果から出された「成人の3.6%」を、国勢調査データから推計した数字です。
この3.6%という割合は、諸外国に比べ突出して高くなっています。

 

ギャンブル等依存症が疑われる者の割合 調査方法:SOGS(生涯)

報告年 対象数 ギャンブル等依存症が
疑われる者の割合
日本 2017 4,685 3.6%
(男性6.7%、女性0.6%)
フランス 2011 529 1.2%
ドイツ 2009 10,001 0.2%
スイス 2008 2,803 1.1%
オランダ 2006 5,575 1.9%
カナダ 2005 4,603 0.9%
イタリア 2004 1,093 0.4%
オーストラリア 2001 276,777 男性2.4%、女性1.7%

ただし上記は「今までにあなたは……」という形式で、生涯のギャンブル経験を聞いた結果で、現在はギャンブルをしていない人も含まれます。
「過去12ヵ月以内」にどうだったかを聞くと、割合は0.8%に下がり、人口で推計すると約70万人になります。

ギャンブル等依存症が疑われる者の割合 調査方法:SOGS(過去1年)

報告年 対象数 ギャンブル等依存症が
疑われる者の割合
日本 2017 4,685 0.8%
(男性1.5%、女性0.1%)
スイス 2008 2,803 0.5%
米国 2001 2,683 1.9%
スウェーデン 2001 7,139 0.6%
英国 2000 7,680 0.8%

調査を行なった研究グループの松下幸生医師(久里浜医療センター副院長)は次のように話しています。
「ギャンブル依存症が疑われる人の中で、パチンコ・パチスロが中心と答えた人は約8割です。日本の場合、町のどこにでもパチンコ店があるという特殊な環境要因から、『今までに一度はパチンコにはまったことがある』人が多い、ということかもしれません。その人たちの一定割合は『自然に回復』していくけれど、残りの人たちが抜けられずに深刻な状態にはまっていくのだと考えられます」

全国調査の詳細はこちら(国立病院機構 久里浜医療センター)

パチンコに平均で年217万円!?

1989年(平成元年)、パチンコの「遊技人口」は2,990万人でした。
これが、2017年には900万人と、3分の1以下に減少しています。
それなのにパチンコの市場規模は、15兆3000億円から19兆5400億円へと拡大しているのです。

この伸びを支えたのは、1人あたりの「遊戯費用」の増加です。
年間約50万円から約217万円へと、4倍以上に膨れ上がっています。
もちろん全額損するわけではなく、確率的には85%程度は還元されると言われてはいますが。

それ以外のギャンブルは?

ヘビーユーザー化の動きはパチンコ業界に限りません。
公営ギャンブルにも同じような傾向がみられます。

競馬・競輪・競艇・オートレースなどはそれぞれ別の法律で管理されていますが、売り上げが落ちると法律が変えられ、よりギャンブル性の高い馬券や車券が売られるようになっているのです。

中央競馬で、かつて主流だった「枠番連勝」の最高配当は1970年に出た12万円台でした。
ところが今の主流である「三連単」は、なんと3000万円近い配当が2012年に出ています。
さらに2011年からは、指定された5レースの1着馬を全て当てるWIN5が最高払戻金額6億円という触れ込みで導入されました。当初はインターネット投票のみでしたが、2018年よりUMACAカードによるキャッシュレス投票で、競馬場やWINSでの購入が可能となりました。これまでの最高賞金額は1票(100円)で4億2012万7890円です。
競輪では、最高配当額が12億円にもなる「重勝式車券」と呼ばれるものも発売されているのです。

一方で、購入の条件はゆるくなっています。かつて学生は成人していても馬券を購入できなかったのですが、2005年の法改正で解禁され、07年からは競艇・競輪・オートレースも解禁となりました。
電話やインターネットによる投票システムも導入され、広域に渡る場間場外を含む場外投票券売場の拡充も行われています。

広告も野放し状態です。
たとえば2016年末の「有馬記念」は、テレビ・新聞・インターネット広告だけでなく、駅の柱巻や車両内すべてを占拠した「電車ジャック」まで行なわれていました。
また、競馬場では子ども向け遊具や、馬とふれあえるイベントを行っており、子連れ入場を促しています。

その議論は的外れ

2016年の国会でIR推進法案の審議が行なわれた際、メディアでにわかにギャンブル依存症が注目されました。

「カジノが解禁されるとギャンブル依存症が増えて問題だ」
「カジノを作る際にはギャンブル依存症対策をするから問題ない」
などの反対派・推進派の論調がさかんに紹介されましたが、いずれの理屈も実態とはズレています。
カジノ問題にかかわらず、日本はすでに、世界にも例をみない「ギャンブル大国」なのです。

 


以上は、季刊『Be!』122号・126号・129号の記事より、一部を抜粋・改編したものです。
季刊『Be!』122号の特集「パチンコ依存の処方箋」では、ギャンブルにはまるしくみや日本の現状、発達障害やうつ病などとの関係、ギャンブル依存症の治療と回復、家族へのアドバイスなど、多角的にとりあげています。

季刊〔ビィ〕Be!122号……特集/パチンコ依存の処方箋
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また、ギャンブルの全国調査については、129号にインタビュー形式のくわしい記事を掲載しています。

季刊Be!129号表紙
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