インターネット依存の症状は?
1996年にアメリカ心理学会で、「インターネット依存」の概念を提唱したピッツバーグ大学のキンバリー・ヤング博士は、インターネットへの依存の度合いを判定するための「インターネット・アディクション・テスト(IAT)」を作成しました。
この20項目のテストの中には、正常な長時間使用と病的な長時間使用の両方の判定要素が入れられていますが、病的な使用に関する項目は以下のようなものです。
インターネット・アディクション・テスト(IAT)の一部
- インターネットをする時間を増やすために、家庭での仕事や役割をおろそかにする
- インターネットをしている時間が長くて、学校の成績や学業に支障をきたす
- 人にインターネットで何をしているのか聞かれたとき防御的になったり、隠そうとする
- 日々の生活の心配事から心をそらすためにインターネットで心を静める
- インターネットをしている最中に誰かに邪魔をされると、いらいらしたり、怒ったり、大声を出したりする
- 睡眠時間をけずって、深夜までインターネットをする
- インターネットをする時間を減らそうとしてもできない
- インターネットをしていた時間の長さを隠そうとする
- インターネットをしていないと憂うつになったり、いらいらしたりしても、インターネットを再開すると嫌な気持ちが消える
いかがでしょうか。
これらに、いくつか思い当たる項目があるなら、あなたのインターネットへの囚われは進行しているといえるでしょう。
他にも様々なスクリーニングテストがありますので、ぜひ試してみてください。
インターネット依存の関連問題
インターネット依存が、身体的・精神的・社会的にどのような実害をもたらすと言われているのかを見ていきます。
冒頭でも述べた通り、インターネット依存は現在もエビデンスや情報収集が盛んな分野です。データがそろい因果関係が明確になれば、更に問題が顕在化するでしょう。
おおよその状況を知ることで、予防策を講じるヒントになればと思います。
①健康被害
- 視力障害(スマホ近視/スマホ老眼)
- スマホ巻き肩/スマホ肘
- テキストネック/ストレートネック/スマホ首
- 睡眠障害(長時間使用に関する生活リズムの乱れ、集中力低下)
- 指の腱鞘炎・指の変形(スマホの荷重を支える骨の変形)
②学習能力・運動能力の低下
- 学習能力の低下(相対的な学習時間減少・集中力低下に伴う)
- 運動能力の低下(相対的な運動時間減少に伴う)
- 言語能力の低下
③注意力低下による事故・負傷など
- 歩きスマホ、ながらスマホによるホーム転落事故など
- 運転中のスマホ操作による自転車・自動車事故など
④コミュニケーションのトラブル
- 誹謗中傷、いじめ(SNS参加に対する脅迫観念)
- 親子関係の希薄化、友人関係の希薄化
- 社会性・感受性の低下
- 抑うつや攻撃性の出現
⑤金銭のトラブル
- オンラインゲーム/アプリゲームの高額請求
- 通販サイトの後払い利用などによる支払いの滞納など
- 架空請求サイトによる詐欺被害
⑥犯罪加害・被害に関するトラブル
- 意識の薄い犯罪予告/犯罪勧誘
- Twitter等での犯罪・非常識行為の自慢
- 有害サイトへのアクセス・援助交際・金銭授受
- 画像・動画配信被害(個人の特定・ストーキング・リベンジポルノ)
- 個人情報の漏えい
インターネットは、社会に不可欠なインフラへと成長しています。
また、個人がインターネットに接している時間も徐々に長くなってきており、これら以外の関連問題も今後さらに顕在化するでしょう。
また、幼児期からスマートフォンやタブレットを利用することによるメリットもデメリットも未知数です。まさにこれから様々な影響が発見されることでしょう。
これらの問題の一つが当事者にあったからといって、即インターネット依存とはなりませんが、インターネット依存の結果として、これらの問題のいずれかが現れるという可能性はあります。
インターネット依存を予防するために
自分自身が、インターネット依存にならない、子供たちをインターネット依存にしないために、いくつかのポイントをお伝えします。
インターネット依存を知る
度々述べている通り、インターネット依存はまだまだ生まれて日の浅い依存症です。
今後のエビデンスの蓄積で、様々な状況の変化も起きるでしょう。
インターネットはもはや生活と切っても切り離せないインフラのため、ポジティブな側面にも意識を向けて、有効活用する方法を考えることも必要になります。
常に最新の情報を入手し、予防への意識をアップデートするようにしてください。
自分自身の機器利用を定期的に省みる
なにげなく手持無沙汰の時に、スマートフォンでSNSやニュースサイトを見たりしていませんか? 寝る前に、ちょっと10分と思って、スマートフォンでゲームを始めたら、いつのまにか2時間経ってしまった。そうだとすれば、その人は黄色信号です。
依存の入り口はそういう目的意識のない惰性的な利用の陰に隠れています。
極力、情報機器を使う際は、何をするかを決め、使用時間を決めて触ることで、きりよく機器を利用することができ、ダラダラとした利用から離れやすくなります。
端末利用のルールを決める
こどもにインターネットに接続できる機器を買い与える際には、もしくは自分の機器を貸し与える際には必ずルールを決めて渡すようにしてください。必ず渡す前にお互いが納得できるルールを話し合って決めます。そして、ルールを守れなかった時のペナルティも話し合って決めましょう。
ルールを守れなかった時は、厳格な態度でペナルティを課します。
中途半端にしてしまうと、決めたルールを守らなくていいという考えが生まれてしまい、その後の機器の利用に歯止めがかからなくなります。
親子でルールに取り組む
ルールは親子で守れるものにして、一緒に取り組んでください。
例えば、夜9時以降は触らない。親子の端末を同じ場所に保管しておく。食事の時にスマートフォンは触らない。「仕事だから~」「○○だから~」と言い訳をしない。何かあったら、すぐ親や周囲の人に相談する。などです。
子どもといっしょに取り組むことで、自身のインターネット依存の予防にもなります。
親が厳格な態度でルールを守っていることは、必ずこどもにも伝わります。
インターネットの無い環境に臨む機会を作る
たまには、インターネットの無い環境に親子で臨むことも大事です。
電波の届かない場所にキャンプでも良いですし、家族全員が使わないというルールを決めて週末旅行などです。
自分自身についてもそうですが、もしこの取り組みの間に携帯が気になってソワソワしてしまうような素振りがあれば、もしくは頻繁に携帯を使いたがるようなことがあれば、携帯機器へのとらわれが生まれています。要注意です。
インターネット利用以外の時間の使い方へ誘導し、様々なことに意識を向けられるように介入を考える必要があると言えます。
こどもの利用状況を知る
どんなアプリがインストールされているのか、どんな友達とやり取りをしているのか、普段の会話からこどもの利用状況を知ってください。
利用しているアプリや何を楽しんでいるのかを知ることで、子供の利用状況にどんな潜在的なリスクがあるのかを知ることができます。
かといって、頭ごなしに否定したり、禁止したりするのではなく、子供がどういう目的意識を持ってそのサービスを利用しているのかを知って理解することで、何かトラブルがあった際の解決の糸口が見つかりやすくなります。