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アルコール関連問題

調査/データ

2007~11年 警察職員による飲酒運転 事例の分析

特定非営利活動法人ASK 飲酒運転対策特別委員会 2011年12月まとめ

取り締まる側である警察職員による飲酒運転が後を絶たない。
その背景には、モラルだけでは防止できない問題があるに違いない。
原因と対策を探るため、事例を分析することにした。
情報ソースとして用いたのは、2007年1月1日~2011年12月31日にネットニュースに掲載された警察職員の飲酒運転事例86。
うち、現職が運転者である77例を分析したところ、いくつかの特筆すべき傾向が見られた。

1)50代、40代のベテラン世代による飲酒運転が多い。

2)発生時間は、「夜間」43例、「日中」34例。
注目すべきなのは、「朝」の発生(23例)が「夜」(25例)に迫っていることである。
飲んだ翌朝に0.5mg/lを超える呼気濃度が検出されるケースも多くある。
背景に「大量飲酒」がある。

3)運転理由は「帰宅」が22例と多いが、「出勤」が11例、「緊急出動」が3例あり、酒臭から職場で飲酒検査し発覚したものが9例ある。

4)飲酒場所は「飲食店」(33例)と「自宅」(30例)が拮抗。
「飲食店」は夜間飲酒が圧倒的だが、「自宅」の半分は日中飲酒である。
また、飲食店飲酒の4割強が「帰宅」のために運転しているが、自宅飲酒は「出勤」が2割・「送迎」が2割と理由がさまざまである。

5)「日中」飲酒が21例ある。休日や当直明けの飲酒28例のうち半数は日中に飲んでいる。
(シフト勤務により習慣化の可能性がある)

6)飲酒から運転までの経緯では、「翌朝」が21例と多い。その半数が出勤時に事故を起こしている。

7)基準を設けてアルコール依存症について推測したところ、「疑いが濃厚」が33例と4割。
大量飲酒の予備群をあわせると7割を超える。アルコール依存症は飲酒のコントロール障害であり、警察官が飲酒運転をする主たる原因はまさにここにあるのではないか。

8)発生時間の「夜間」と「日中」を比較したところ、大きなパターンの違いがあった。
典型例は以下。
夜間…40代中心で、飲食店で飲酒し、ほぼ直後に帰宅のために運転し、事故か検問で発覚。
    依存症予備群とその他が多い。
日中…50代中心で、自宅で飲酒、翌朝出勤時に事故か職場検査で発覚。
    日中飲酒の比率が高く、依存症の疑い濃厚が多い。

警察職員として、飲酒運転が犯罪であり危険であることは熟知しているはずである。
今、必要な対策は以下である。

1) 職員全体に、分解時間や睡眠との関係など「アルコールの基礎知識」の周知を図ること。
2) とくに、シフト勤務にありがちな寝酒・朝酒・昼酒や休日の大量飲酒の危険性を伝え、飲酒習慣の見直しと節酒の指導をすること。
3) アルコール依存症への誤解と偏見を正し、早期発見・介入・治療・職場復帰支援の体制をつくること。

 

1.事件の種類(86例)

飲酒運転 ほう助 隠蔽
現職 同乗 車両提供
77 3 5 1 3

2.運転した車両(77例)

パトカー 自家用車 バイク 自転車
4 61 10 2

3.事故(検挙)発生時の状況(77例)

事故 検挙 わいせつ行為 後日発覚
検問等 職場
48 15 9 4 1

4.事故(検挙)発生時の時間(77例)

日中 夜間

5時~12時

12時~17時

17時~0時
未明
0時~5時
23 11 25 18
34 43

5.飲酒運転した現職者の年齢(77例)

20代 30代 40代 50代 60代
13 10 22 30 2

6.飲酒運転した現職者の役職(77例)

警視 警部 警部補 巡査部長 巡査長 巡査 その他職員
3 4 20 19 13 10 8

7.運転した理由(77例)

出勤 緊急
出動
帰宅 買物 飲食 パチンコ
競艇
山・
公園等
送迎 家族
訪問
所用 わいせつ
行為
不明
11 3 22 9 3 2 4 7 2 1 2 11

8.飲酒場所(77例)※複数回答

飲食店 自宅 実家 同僚宅等 屋外 車内 不明
33 30 2 3 5 3 1 4

9.飲酒時間帯(77例)※複数回答

夜間
17時~5時
日中
5時~17時
不明
55 21 2

10.飲酒から運転までの経緯(77例)

ほぼ直後 仮眠・休憩後 翌朝 帰宅後 不明
20 11 21 8 19
うち帰宅10 うち帰宅5 うち出勤11 うちコンビニ4

11.飲酒時の勤務状況

非番・公休 当直明け 出勤待機 職場のレク 療養中 勤務中
25 4 1 2 2 1

※その他は記述がない。勤務後の夜に飲酒している例が多いと思われる

12.依存症が疑われる件数(77例)

依存症 予備群 その他・不明
33 23 21
43% 30% 27%

※飲酒状況や背景についての記述から、依存症の可能性を下記の基準を用いて推測した。
記事の記載がまちまちなため正確ではない。詳細がわかれば、もっと増える可能性が高い。

依存症とその予備群を疑う基準
アルコール依存症の疑いが濃厚 アルコール依存症予備群
車内で飲酒、帰宅時に駅で立ち飲み、勤務中に飲酒、朝酒
断続的な飲酒、長時間の飲酒、1人ではしご酒
自宅飲みの翌日に高濃度のアルコール検出
飲酒運転の常習性
睡眠薬と併用、うつ症状を和らげるための飲酒
呼気濃度0.4以上
日本酒換算5合以上の大量飲酒
休日の昼間に飲酒

13.事故(検挙)発生時間「日中」と「夜間」のパターンの違い

日中 夜間
《1》年齢 20代 4 9
30代 3 7
40代 7 15
50代 19 11
60代 1 1
《2》事故(検挙)
発生時の状況
事故 19 29
検挙 検問等 3 12
職場 8 1
わいせつ行為 3 1
後日発覚 1 0
《3》飲酒時間帯 日中 10 9
夜間 22 33
1日中 1 0
不明 1 1
《4》飲酒場所
(複数回答)
飲食店 12 21
自宅 17 14
実家 1 1
同僚宅等 0 4
屋外 2 3
車内 1 2
1 0
不明 3 1
《5》運転理由 出勤 11 0
緊急出動 1 2
帰宅 4 18
買物 2 7
飲食 0 3
パチンコ・競艇 2 0
山・公園等 2 2
送迎 3 4
家族訪問 0 2
所用 1 0
わいせつ行為 2 0
不明 6 5
《6》運転理由 ほぼ直後 4 16
仮眠・休憩後 2 9
翌朝 21 0
帰宅後 3 5
不明 4 13
《7》依存症 依存症 20 13
予備群 7 16
その他・不明 7 14