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薬物乱用・依存

知識

処方薬について不安な人へ

「長く飲んでいても問題はない?」
「家族の飲み方が心配」
「主治医の説明に納得できない」
「できれば薬を減らしたい」
……などなど、処方薬に関してよくある疑問や心配ごと。
季刊『Be!』78号の特集では、話を聞いた複数の医師からのアドバイスを総合してQ&Aにしています。
その内容をもとに、ご紹介します。

Q「この薬、ずっと飲んでいて大丈夫?」

「長く飲み続けるのは心配」
「この飲み方で、問題はないのか?」
そんなふうに不安になったら、まずは次のようなことを自己チェックしてみましょう。

何のための薬か知っている?
調剤薬局での説明や、おくすり手帳などで、薬の飲み方、はたらき、注意事項や副作用などがわかるようになっていますが、向精神薬の種類が増えると何が何だか……となることがあります。
どの薬はどんな目的で飲んでいるのか、把握できていますか?
理解できていなければ、薬剤師や主治医に確かめましょう。

今後の見通しは?
長期間飲み続けることが必要な薬もあれば、一時的な症状を抑えるための薬もあります。
今飲んでいる薬は、そのどちらでしょうか?
もしも一時的なつらさや症状を和らげるため処方されているとしたら、いつ頃までに減量していく、あるいは服薬をやめる、という見通しは立っているでしょうか?
そのことについて主治医から説明を受けていますか。

処方どおりに飲んでいる?
決められた量を、決められた時間に飲んでいるでしょうか?
自分で薬の量を調整したり、勝手にやめてみたり、たまった分をまとめて飲んでいたりしませんか?
もしもそういう状況があるなら、今後の治療のために、主治医に「処方通りに飲めずにいます」と知らせることが大切です。

お酒と一緒に飲んでいないか?
薬とアルコールを併用するのはタブーです。
特に抗不安薬や睡眠薬を服用している場合、飲酒すると薬の作用を変化させてしまい、非常に危険です。
そのほかの薬も、アルコールによって効果が薄れたり副作用が強まったりすることがあるため、アルコールと併用していると、「薬が効いているかどうか」を主治医が判断できなくなってしまいます。
飲酒の習慣がある人は、主治医にそのことをきちんと伝えましょう。

状態を報告している?
薬の種類や量が適切かどうかは、患者が主治医に対して今の状態をきちんと報告しなければ判断できません。
薬を飲んだ結果、どうだったか、不都合な点はなかったかなどについて、主治医に報告しましょう。
また、アルコールや他の薬物の依存がある場合は、治療方針にかかわる重要な情報ですので、主治医に伝えることが大事です。

疑問があったら説明できる?
量が多すぎないか、少なすぎないか、この飲み方で問題はないのか、副作用はどうなのか、などについて疑問がある場合に、主治医に質問ができるでしょうか?
主治医から納得のいく説明が得られているでしょうか?

薬以外の解決法も考えた?
たとえば不眠や不安などに対して処方が一定期間続いている場合、薬以外にも楽になる方法はないか、考えてみたでしょうか。
自助グループなど同じ問題を抱えた仲間がいる場所へ行く、カウンセリングを受ける、規則的な生活を心がける、身体を動かす、眠りに付きやすい環境を工夫するなど。
こうした方法について、主治医と話し合ってみるのも良いでしょう。
なお不眠のため寝酒を用いるのはお勧めしません。その理由についてはこちらをご覧ください。

Q「家族の服薬の仕方が心配。どうしたら?」

医師が出した薬となると、飲み方が心配でも、お酒や違法薬物と違って、「聞いていいことなのか?」とスタートラインから戸惑ってしまうことも多いです。
疑問があるときは、次のようにして情報を得ましょう。

まず様子を観察しよう
可能な範囲で、それとなく様子を観察しましょう。
処方より多く飲んでいないか?
(2週間分の処方を、3日間で飲みきってしまうなど)
複数の医師にかかって同じような薬をもらっていないか?
(精神科だけでなく、内科や整形外科などで薬を出してもらうケースもあります。)
薬をためこんだりしていないか?
……などです。

主治医に確かめよう
「本人はこのような飲み方をしているようですが、大丈夫でしょうか」と聞いてみましょう。
日常の様子が不安であれば、そのことを具体的に主治医に告げましょう。
その上で、アドバイスを求めましょう。

Q「主治医の説明に納得できない。どうしたら?」

自分のことにせよ、家族のことにせよ、薬について質問して納得できる答えが得られない場合は、セカンド・オピニオン(別の医師の意見)を求めると良いでしょう。
これを「主治医への裏切り」と感じてしまう人も多いですが、そんなことはありません。
不安が解消されれば、主治医への信頼が回復します。

聞いてみたい医師を探す
保健所や精神保健福祉センターなどで紹介してもらう方法の他に、本やインターネットなどで探す方法もあります。
目星をつけたら、その上で、「セカンドオピニオンがほしいのですが」と電話をしてみるなどして、依頼するかを判断しましょう。

病歴や薬歴を整理する
今の状態だけを訴えても、初診では判断のしようがないことも多く、「主治医の先生によく聞いてください」で終わってしまう場合もあります。
いつから、どんな症状で受診し、その後の経過がどうなのか、どんな薬がいつからどのくらい処方され、どんな飲み方をしているのかなどを、前もって整理しておき、効率よく相談できるようにしましょう。
その上で、「このような経過ですが、処方についてご意見を伺えますか?」と聞いてみましょう。

紹介状があればベスト
上記の通り、あやふやな情報ではセカンド・オピニオンは難しい場合があります。
できれば主治医に「セカンド・オピニオンを求めたいので、紹介状をお願いします」と依頼するのが良いでしょう。基本的に拒否はされないはずです。
セカンド・オピニオンを求めた結果、「この処方で間違いないでしょう」ということになれば、「先生の処方で間違いないと言われたので、心配しなくて良いとわかって安心しました。引き続き、よろしくお願いします」と言えば良いのです。

ウラワザもある?
そうは言っても、患者や家族の立場としては「セカンド・オピニオンなどと言い出したら、医師との関係が気まずくなるのでは」という不安もあるでしょう。
本来は隠さずに言えることが一番ですが、どうしてもそれができないときは、以下のようなやり方もあります。
「転居の予定があり、その地域で診てもらえる病院(またはクリニック)をあらかじめ探しておきたいのです。そのための紹介状をお願いします」
紹介状は本来、かかる予定の医師にあてて書くものですが、病院かクリニック(診療所)かだけでもわかっていれば、宛名なしでも書いてもらえます。
なお、その後も同じ主治医にかかる場合は、「転居がとりやめになりました」と話せば問題は起きません。

Q「薬を切りたい、減らしたい。どうしたら?」

自己判断で薬をやめたり、減らしたりするのは危険です。
慢性的な症状を抑えるために薬が欠かせない場合もあるし、抗不安薬や睡眠薬などはいきなりやめると離脱症状が出る場合もありえます。
その結果、その後に大量に飲んでしまったりすることで、依存が進むケースもあるのです。

主治医に確かめよう
長期に服用していることに不安が生じたり、依存なのではと心配になったら、とにかくまずは主治医に相談しましょう。
薬を減らしたい、あるいは薬をやめたいという希望も、主治医に伝えてみましょう。相談しても納得のいく答えが得られない場合は、セカンド・オピニオンを求めましょう。

医師のもとで徐々に減らす
たいていの場合は、処方薬をいきなりなくすことはしません。
よくある対応としては、より依存性の少ない(長期作用型の)薬に置き換えて徐々に減らす方法です。状況によっては、置き換えずに減らせることもありますが、いずれにせよ経過をよく知っている医師の判断が必要です。
離脱症状が予測される場合は、入院で減薬・断薬するのが安全ですが、外来で可能な場合もあります。また、10日ほどで断薬できる場合もあれば、2~3ヵ月かかる場合もあります。

周囲のサポート体制も
自分の気持ちを話せる場所、支えてくれる仲間や友人、やりがいや楽しみを感じられること・・・。
薬をやめて生きるために、周囲の環境やサポート体制を整えましょう。

 

処方薬についてご心配な場合は、主治医をはじめ医師にご相談いただくか、薬物問題についての相談を受けている専門機関にご相談ください。
ASKには専門スタッフがいないため、ご相談には対応していません。
下記を参照してください。
薬物問題の相談先