大人にも役立つ、思春期向けのライフスキル・コラムです。
――気持ちをキャッチし発信するスキル
私たちは毎日、さまざまな気持ちと一緒に生きています。気分のいいときもあれば、パッとしないときもあります。
でも感情に「いい・悪い」はありません。
「これぐらいでムカッとするのは変」「こんなことで落ちこんじゃダメ」なんてことはないのです。
あなたの感情はあなただけのもの。大切なことをあなたに伝えています。
たとえば、むしょうに悲しくなったとき、誰かの行動に傷ついているのかもしれません。そのことを相手に伝えるか、他の人に気持ちを聞いてもらうことが必要です。
なんだかうんざりするのは、立ち止まって休もうというサインかもしれない。
気持ちがぐしゃぐしゃに混乱するのは、誰かの助けが必要というサインかも……。
感情のサインを受けとらずに、そのまま押しこめていると、どうなるでしょう。
怒りをがまんしたあげくに、爆発することもあります。
モヤモヤの原因を探らずに自分ばかり責めて、すっかり自信をなくす場合もあります。
おしこめた感情が体に出てくることもあります。しつこい頭痛や、やたらと肩がこる、すぐに下痢をする、などです。
自分の気持ちが自分でもわからなくなることもあります。自分の気持ちが自分でわかるなんて当たり前と思うかもしれませんが、実は感情がわかるには練習が必要なのです。
【ヒント1】自分のパターンを知っておこう
誰でも、気持ちとのつきあいかたにクセを持っています。
寂しさを感じるのが苦手で、大して好きな相手でなくても誰かと会って騒いでいないと気がすまない人もいます。
心配な気持ちになると居ても立ってもいられなくなり、誰かれかまわず怒鳴り始める人もいます。
自信がないのを隠そうとして、わざとえらそうにふるまう人もいます。
どれもやっかいなクセですね。
あなたは、どんな気持ちを感じるのが苦手でしょうか?
苦手な気持ちが襲ってきたとき、どんな行動をとるクセがありますか?
その結果、どうなりますか?
何を感じているのかキャッチする前に、スイッチが入ったように自動的に行動してしまうと、気持ちはおきざりになります。
いくら騒いでも寂しさは埋まらないし、心配な気持ちは自分を追い立て続けるし、自信のなさは心の奥に居座ります。
気持ちを消そうとして行動すればするほど、自分もしんどくなるし、周囲との関係をこわすことも多くなるのです。
自分のパターンを知っておけば、いつものように行動する前に、「ちょっと待って」と自分を止めて深呼吸することができます。
気持ちとつきあう時間をとりましょう。
「私は寂しい」「心配だ」「自信がない」と、まずはそのまま自分に言えばいいのです。
【ヒント2】感情に名前をつけよう
あなたの感じる感情には、どんなものがあるでしょうか。
うれしい、楽しい、悲しい、むなしい、不安だ、ドキドキ、イライラ、ムカッ、がっかり、うらやましい、びっくり、ホッとする、めんどう、恥かしい、ほのぼの、どんより、すっかり夢中、好き、きらい、いやだ、わくわく、焦り、悪かった、やったー!、どうしよう、信じられない、納得できない、いい感じ、わけわかんない!
……他にも、あなたらしい「気持ちを表わす言葉」がたくさんあると思います。思いつくままに書いてみましょう。いくつぐらい書き出せるでしょうか。
自分が今感じている気持ちは、どんな名前をつけたら一番しっくりするでしょう。
二つの感情を同時に感じることも多いものです。
怒っているけどさびしい。
不安だけどわくわく。
好きだけど頭にきている。
……特に思春期には、いろいろな感情がごちゃまぜになってやってくることがよくあります。
その時々の感情を、おさえたり否定したりせずに、そのまま受けとめて「これは何だろう?」と探ってみましょう。その感情に、名前をつけてみましょう。
【ヒント3】サインを受けとろう
今の感情は、どこからきたのでしょうか?
どんなことに対してわきおこっているのでしょうか?
今日、何があったでしょう?
……感情のルーツを探ってみましょう。
その感情は、何を伝えていますか?
あなたは今、何を必要としているのでしょう?
黙って一緒にいてくれる友人。
誰かのアドバイス。
自分の力で精いっぱいやってみること。
思い切り泣くこと。
素直に相手に気持ちを伝えること。
ケンカした相手と仲直りすること。
「大丈夫だよ」と誰かに言ってもらうこと。
「よくやっているよ」と認めてもらうこと。
何も考えずに思い切り楽しむこと……。
あなたが必要としていることを、自分に与えてあげましょう。
すぐに行動するのが難しかったら、まずはその気持ちを誰かに話したり、日記に書いたりして整理しましょう。