大人にも役立つ、思春期向けのライフスキル・コラムです。
――自分で決断するスキル
物事を決める方法は、子ども時代と思春期とで大きく違います。
子どもは、責任をもった決断がまだできません。たとえばオヤツに何を食べるか、今日はコートを着ていくか、何時まで遊ぶか……すべて大人のアドバイスが必要です。
というのも、結果を予測して行動する能力が育っていないから。
行動の理由は、楽しいから、やってみたいから、などなど。それがうまくいけば再びやるし、ひどい目にあえば次はやらない、という試行錯誤の中にいるのです。
思春期になると、栄養やカロリーを考えて食べ物を選んだり、TPOや気候で洋服を考えたり、試験までの日数を数えて計画を立てたりもします。進路の決定といった人生上の決断も始まります。
つまり、自分の健康に自分で責任を持ち、今の生活に自分で責任をもち、さらに自分の将来に対しても責任を持つようになるのです。
大事なのは、誰かの言うなりではなく「自分で決める」こと。そして、もしも思ったような結果が出なくても、誰かのせいにするのではなく自分で引き受けることです。
「うまくいかないのは誰かのせい」と感じていたら、その誰かが変わるまでは、つらさから抜け出せないことになります。けれど自分が決めたことなら、たとえ失敗してもそこからたくさんのことに気づけるはず。
それが、次の挑戦のための貴重な経験となるのです。
【ヒント1】自分で決めるためのプロセス
好みでパッと決める、カンで決める……それもひとつの方法。けれど重要な決定をするときは、それなりの準備が必要です。
1 問題をはっきりさせる
決めるべきことや、解決しなければいけない問題は何か、自分の中ではっきりさせる。
目をつぶって考えてもいいし、ノートに文章や図で書いてみてもいい。
2 選択肢をあげる
こうするしかない、と最初から思いこまないこと。
どんな選択がありうるか、どんな解決法が考えられるか、ゲームのつもりでたくさんリストアップしてみる。
3 何が起こるかを予測する
この行動をした場合、どんな結果になるだろう?
メリット(自分にとって得になること)は何だろう? デメリット(損になること)は何だろう?
行動しなかった場合はどうなる?
……あれこれ予測してみよう。
どんな決断にも、それなりのリスクはともなう。結果に直面して慌てるのではなく、あらかじめリスクを想定しておくことは重要だ。
4 自分に聞く
自分は何を大切にしたいか、どんな自分になりたいと望んでいるのか……そのことに照らしながら、どの選択が一番自分にフィットするか、自分に問いかける。
5 自分で決めて行動する
必ずしも、メリットが多いものやデメリットの少ないものを選ぶ必要はない。
利害だけを計算して決めると、予想通りうまくいかなかったときに計算違いを後悔する。
だから、最後はあくまで自分の気持ちに従って選ぶといい。
もしも思ったような結果にならなくても後悔しない……と思えるような選択が、最良の選択。
6 結果から学ぶ
うまくいったとしたら、どこがよかったのか考えて、自分を十分ほめよう。改善点があれば、それも忘れないようにしたい。
もしもうまくいかなかったら、そこからたくさんのことを学べるはず。
方法がむちゃだったのか?
目的があいまいだったのか?
タイミングがよくなかったのか?
もっと周囲の助けを求めるべきだったか?
……失敗から学んだことは、これから生きてくる。
【ヒント2】情報のプロになろう
決断のためには、正しい情報を集めることが必要です。
うわさやフェイクニュースに踊らされないために、情報集めのコツを知っておきましょう。
それには次のことをチェック!
1 情報源はどこか?
この話を流した人は、どんな立場で何を目的にしている?
誰かから流れてきた情報の共有だとしたら、元になる情報を流した人は?
サイトの情報だとしたら、管理者はどんな人?
2 信じるだけの根拠があるか?
それが本当らしいという裏づけは何?
確認するにはどんな手段がある?
実際に自分で調べてみた?
3 他の情報と比較したか?
別の立場の人はどんなことを言っている?
別のサイトや他の人のSNSにはどんな情報がある?
調べる手段がわからなかったり、自分の判断に自信が持てないときは、経験が豊富な大人にアドバイスを求めるとよいでしょう。
それを参考にしながら、最後は自分で判断すればいいのです。