私たちの知恵を、どうぞ社会に生かして!
アルコール・薬物依存症やアダルト・チャイルド(AC)の課題と向き合って生きる中で、私たちはさまざまな「知恵」をつかんできました。 その多くは、自立、自己信頼、対人関係、ストレス対処にかかわるものです。
日本社会は今、たくさんの課題をかかえています。私たちが回復の中で手にした「知恵」は、薬物による酔いを必要としない社会、間違いや弱さも受けとめる社会、自立した関係性をベースにした社会をつくるために役立つと信じます。
そのいくつかを紹介して、私たちからのメッセージとします。
依存症の回復から
危機は転換のチャンス
多くの依存症者が、何らかの危機状況をきっかけにして回復へと踏み出した。悪いこと、困った事態が起きてはじめて、人は真剣に転換を考える。それまでは見ようとしなかった問題に目を向ける。危機から目をそむけなければ、転換のチャンスとすることができる。
今日一日を生きる
「酒は一生飲まない」と力むと、かえってストレスでつぶれる。むしろ、明日のことは明日考えようと割り切って、今日一日をていねいに積み上げていく。それが断酒を継続するコツ。
「仲間」の共感が最大の力となる
依存症からの回復は、同じ体験をもつ仲間の中で始まった。仲間どうしの共感には深いレベルの理解と励ましがある。その中で人は初めて心を開く。自助グループなしに、依存症の回復は語れない。もっともっといろんな分野で、この自助グループの機能を活用してほしい。
家族の回復から
コントロールを手放す
お酒をやめさせようと必死になった。問題が外に知れないよう懸命になった。でも事態はますますひどくなった。私がやらなければ……という思いこみを手放してみることにする。私が誰かのために必死にならなくても、何も崩壊しない。これは依存症者の家族がつかんだ知恵。
人は変えられない、自分を変える
依存症者からむりやり酒をとりあげることはできない。変わりたくない人を変えることはできない。私が変えられるのは、私だけ。相手に向けていた目を自分に向ける。すると不思議。自分が変わると、相手との関係性が変わる。その影響で、相手は少しずつ変化しはじめる。
自分を主語に語る
自分を犠牲にして「相手につくす」のは、けっして善ではない。依存を招くし、感謝されないと相手を責めたくなる。不満がたまり、みじめになる。相手にふりまわされるのではなく、「自分が主人公の人生」を生きよう。そのためには、私の体験、私の気持ち、私の思いを正直に話すこと。相手がどう言ったか、何をしたかではなく。
アダルト・チャイルドの回復から
感情は出していい
感情は出しちゃいけない……ずっと、そう思ってきた。でもおさえつけた感情は、形を変えて吹き出す。それが自分や人を傷つけることに気づいた。悲しみも怒りも、自分の状態を教えてくれる大切なサイン。感情はためずに、出すほうがいい。安心できる場で言葉にしてみる。泣きたいときには泣く。すると、自分が何を感じていて、どうしたいのかわかってくる。
もっと遊ぶ
家族の問題の中で、ずっと小さな「大人」としてふるまってきたから、遊ぶことをとうに忘れていた。気がつくと、自分のことはさておいて、人の世話や仕事にのめり込む大人になっていた。遊びは、「人生の栄養補給」。遊びは、頭でっかちの脳を解放して、心身をリフレッシュさせてくれる。大人も子どもも、もっと遊ぼう。
自分をほめる
自分を否定することが多かった。その減点主義をやめる。大人だって、ほめられると育つ。誰かにほめてもらうのを待つのではなく、1日1回は必ず自分で自分をほめることにする。自分とのいい関係をつくることが、人とのいい関係をつくるもとになる。
ASK2000年アピールTOP
1 子どもたちを守るために
2 早期発見・治療を進めるために
3 回復から学んだ知恵を社会へ