チェック1 重点対策が必要な職場とは?
【解説と対策】
A群とB群の両方にチェックがついた職場は、<重点対策>が必要です。
チェックの数が多いほど、しっかりやる必要があるということになります。
B群にチェックがついた職場では、「アルコールの基礎知識」を広め、「飲酒習慣の見直し」や「アルコール依存症の予防・早期発見・介入」に取り組む必要があります。
「今は違うが、かつてはBの傾向があった」という職場も要注意。旧来の感覚のまま飲んでいる職員がいる可能性があります。
チェック2 飲酒運転を引き起こす、アルコールの3つの特徴は?
【解説と対策】
答え1. アルコールは 理性 あるいは 脳 をマヒさせる
「乗るつもりはなかったのに、つい乗ってしまった」という人がたくさんいます。「ほろ酔い」は、理性が軽くマヒし、気が緩んだ状態。そのため、「近くだから」「少ししか飲んでいないから」「酔いは醒めたから」「代行がなかなか来ないから」と、つい運転してしまいます。酔い=脳のマヒ。「飲んだら乗るな」はダメ。「飲んだから乗った」のです。
答え2. ビール500mlのアルコールの分解に、およそ 4 時間かかる
純アルコール20グラムを「アルコールの1単位」と呼びます。ビール500ml/日本酒1合(180ml)/焼酎25度100ml/チューハイ7%350ml/ワイン200ml/ウィスキー60ml。めやすとして、この分解におよそ4時間かかると覚えておいてください。3単位飲んだら、半日、アルコールは抜けません。
答え3. アルコールは 依存 性のある薬物である
アルコールは、依存性のある薬物です。習慣的に飲酒しているうちに、飲酒量や頻度が増え、飲酒しないと物足りなくなっていき、本人が気づかないうちに、しだいに依存に足を踏み入れていきます。シフト勤務で寝酒の習慣がつきやすい職場はとくに要注意。予防・早期発見・介入のノウハウを広める必要があります。
チェック3 職場に、こんなことをしている人はいませんか?
【解説と対策】
車の中で仮眠をとり、酔いをさましてから運転する
居酒屋などで飲んだあと、車の中で仮眠をとり、酔いをさますケースが増えています。2時間、4時間……6時間経っても飲酒運転に。飲んだ量が多ければ、当然です。
→酒席に車で行かないこと。加えて、「1単位=4時間」の認識をしっかり広めなければなりません。
飲んだ翌朝、二日酔いで、マイカー出勤する
午前中、出勤時につかまるケースが目立ちます。どんなに飲んでも「一晩寝れば大丈夫」と思っている人が数多くいるのです。
→「1単位=4時間」の認識を広め、飲みすぎを防止しなければなりません。
早朝に車でゴルフに行くのに、遅くまで飲んでいる
休日の飲酒運転がけっこうあります。休みの前夜は気が緩むもの。翌朝、ゴルフや行楽に行くのに、遅くまで飲んでいる人がいます。それどころか、翌日の夕方に飲酒運転でつかまる人さえいます。飲みすぎなのです。
→「1単位=4時間」の認識を広め、飲みすぎを防止しなければなりません。
代行でいったん帰宅した後、近くのコンビニまで車で出かける
代行には落とし穴がたくさんあります。近所のコンビニで運転手を帰し、自宅まで自分で運転したケース。酔って自宅を間違え、そこから自分で運転したケース。いったん帰宅した後、2、3時間後に車で買い物に行ったケースなど。「代行を呼ぶから」と周囲に言って、車の中で仮眠をとり、運転してしまうケースも後を絶ちません。
→代行の手配をしたからと安心してはダメ。酒席対策は万全ですか?
休みの日は昼間から自宅で飲み、夕方車で買い物に行く
飲酒運転には、自宅で飲んでいたというケースがかなりあります。休日には昼間から飲む人が多いのも問題。ちょっとそこのコンビニへ、レンタルビデオ店へ、スーパーへ、ゴミを捨てに、友人宅に。生活の中に飲酒と運転があるのです。
→プライベート時の飲酒についても踏み込んで、飲酒習慣を見直す必要があります。
懲戒処分事例の分析
運転代行の落とし穴
教職員による懲戒処分事例の分析
チェック4 3つの分野の「対策リスト」を点検しましょう
【解説と対策】
<アルコール関連>
1 まずやるべきなのは、「職場全体への啓発」。アルコールの正しい知識を広め、多量飲酒や酒に強いことをよしとするような風土を変えなければなりません。
2 リスクが高い「飲酒傾向が強い人(3単位以上飲む・アルコールチェックに反応・γGTPが高いなど)」を把握して、飲酒習慣を見直すプログラムを実施しましょう。職場内に飲酒運転防止インストラクターを養成すれば、1と2の両方を担当することができます。
3「アルコール依存症の疑いがある人(アルコールチェックに複数回反応・アルコール関連疾患が治らない・酒で問題を起こしたなど)」に対しては、個別対応が必要です。チェック5以降をごらんください。
<管理面>
管理だけを強化すると、すり抜け・かばいあい・見逃しが起きます。
なぜ厳しい管理が必要なのか、きちんと伝え、自覚を促さなければなりません。
飲酒運転対策は、3つの大切なものを守ります。1つめは「命」。2つめは「ドライバーの生活と健康」。3つめは「職場」です。
運輸はもちろん、一般企業や団体、役所や公的機関においても、飲酒運転による事故が起きれば、管理責任を厳しく追及されます。状況によっては経営を危うくします。
社会は大きく動いているのです。昔の常識はもう通用しません。職員に、飲酒習慣を見直す必要性を了解してもらう必要があります。
なお、乗務前8時間は飲酒を禁じている職場が多くありますが、飲酒量によってはアルコールが残ってしまいます。1単位4時間の知識を広めてください。
<職場の飲み会>
職場の飲み会後に飲酒運転になった事例は数多くあります。酒席を設けるときには、飲酒運転対策を念頭に置く必要があります。足の手配だけでなく、飲みすぎ防止もお忘れなく。
飲酒がつきものの宿泊での会合や野外キャンプなども要注意です。何かが足りないからと車でコンビニまで買いに行ったり、誰かが途中で帰宅して事故を起こしたりという事例がよくあります。
「飲んだら乗るな」ではなく、「飲んだから乗った」のだということを肝に銘じておきましょう。
チェック5 アルコール依存症「常識クイズ」
【解説と対策】
答えは、すべて間違いです。
アルコール依存症は誤解と偏見に満ちた病気です。間違った認識をそのままにして対策を進めると、以下のような弊害が起きます。
・職場から排除する動きになってしまう
・身を守るために、本人の否認が強まり、介入がうまくいかない
・治療後の職場復帰がうまくいかず、再発につながる
・予防対策がとられず、アルコール依存症を助長する職場の風土がそのまま温存される
多量飲酒とアルコール依存症は別モノではありません。多くの「酒好き」があと一歩で依存症という、予備群なのです。依存症対策は、正しい認識普及から。
チェック6 アルコール依存症が疑われる職員に対する「間違った対応」とは?
【解説と対策】
見てみぬふりをする
問題があるのではと感じても、あえて指摘しません。言い訳も受け入れます。
「飲酒はプライベートな事柄で、職場が踏み込むことではない」「本人の自覚に期待しよう」「いちいち事を荒立てるのもよくない」と考えるためです。
ところが結果は→本人は「まだ大丈夫、自分はうまくやれている」と感じて飲み続けます。
穏便に処理する
部署内だけ、あるいは社内だけで問題を穏便に処理し、表面化しないようにします。
「かばいたい」という親心や「部署や会社の評判を傷つけたくない」という気持ちがあるためです。
ところが結果は→本人は、問題に直面することなく、飲み続けます。かつ、職場全体に問題を表ざたにしない風土ができあがります。これが対応を遅らせ、取り返しのつかない大きな問題を引き寄せることになります。
人格的に非難する
「だらしない」「いったい何を考えている」と人格そのものを非難し、厳しく叱責します。
「今度こそ考え直して行動を改めてもらいたい」からです。
ところが結果は→責めても、アルコールへの依存が「治る」ことはありません。逆に、うさを晴らそうとして飲酒量が増えてしまいます。
配置転換やクビで解決しようとする
見てみぬふりが限界となり、かばうこともできなくなり、叱責しても改まらないとなると、配置転換を考えます。あるいは、決定的な問題が起きて、勧奨退職や懲戒免職(解雇)にします。
ところが結果は→部署が替わったからといって、飲酒問題が解決することはありません。むしろ、そのストレスでさらに飲酒が増えることでしょう。クビになればなおさらで、飲酒問題がさらに進行した状態で、他の職場に転職していくことになります。つまり、飲酒運転防止にならないのです。
問題を解決するためには、専門治療につなげること。方法はチェック7に。
チェック7 アルコール依存症が疑われる職員に対する「適切な対応」とは?
【解説と対策】
アルコール依存症は、適切に介入して専門治療につなげれば、回復できる病気です。鍵は、この病気に関する正しい認識を関係者一同が共有すること。専門機関と連携すること。
関係者がそれぞれの思い込みでまちまちの行動をとると、介入はうまくいきません。
事実の把握については、勤務態度、健康面、飲酒傾向、家族からの情報など多面的に見る必要があります。職場に健康管理職がいる場合は、介入の中心的な役割をとってもらうといいでしょう。