2008年4月19日、千葉県君津市の職員(29)が運転代行で自宅付近まで帰りながら、駐車場までの約350メートルを自分で運転して酒気帯び検挙され、同月25日、2ヵ月の懲戒処分となった。報道によると、「駐車場に縦列駐車しなくてはならないため、自分で運転してしまった」と話しているという。2008年5月3日には、静岡県牧之原市職員(30歳代)が自宅の約100メートル手前で代行運転手を帰し、自分が運転して検挙された。
このように、せっかく運転代行を頼みながら飲酒運転に至った例は少なくない。そこには、どんな落とし穴があるのだろうか。
当委員会では、06年9月~08年4月までの20ヵ月間にYahoo/Googleのニュースに掲載された飲酒運転事例のうち、「代行運転」の検索に引っかかった64例を分析した。
結局、運転代行を利用せず飲酒運転……33例
1)代行で帰ると周囲には言っていたが、実際には手配していなかった(11)
・連れには「代行で帰ります」と言い、実は頼んでいない
・同僚を代行で見送った後、自分は車中で仮眠をとり運転
・同僚に代行をすすめられたがことわる
・同僚が代行を呼んだが一人になってから自分で運転
2)代行が来るのを待ちきれなかった(12)
・手配したが1時間待っても来ないので、待ちきれずに運転
・待ち時間が長いと聞き断り、自分で運転
3)代行業者が見つからない、車が手配できないなど(7)
4)代行業者が来るまでに駐車場から出庫しようと自分が運転(3)
半数が、代行を頼むと言いながら、自分で運転してしまっていた。
酔っている人の言葉を信じてはいけない! 理性がマヒするのが「酔い」なのだから。
代行が来るのが遅く、待ちきれずに運転してしまう例が多く、中には、自分で出庫してしまったケースもある。同席者や店は、「代行に乗るところまで付き添って確かめる」必要がある。
運転代行を利用したにもかかわらず飲酒運転……31例
5)自宅近くまで帰り、代行を帰して自分が運転(18)
買い物をするため自宅近くのコンビニに寄り、代行車を帰す
道がややこしいので、自分で運転する
自宅で降りてから駐車場まで運転
代行運転中に仮眠したので運転できると思って
酔っていたので、降りる場所を間違えて
6)代行で帰宅後に外出(12) ※うち翌朝出勤時(2)
コンビ二まで買い物に
忘れ物を取りに戻る
代行で次の店に行ったが、そこから自分の車に戻り車中で仮眠して翌朝運転
翌朝、出勤時スピード違反で検挙されアルコール検知
7)その他(1)
飲み屋でのトラブルの苦情を言うために代行で警察署に行き、帰りに運転した。
半数は、運転代行を利用したにもかかわらず、途中で降りたり、帰宅後に外出したりして、飲酒運転に至っていた。とくに多いのが、自宅付近で降りて自分で運転したケース。「自宅までの道がややこしいから」「道が狭く運転しずらいから」「コンビニで買物」などの理由が多い。自宅から数百メートルの距離で懲戒免職になったり、たった50メートルの運転で諭旨免職になった人もいる。酔いすぎて自宅を間違え、酒酔い運転で近隣の塀を壊し懲戒免職になった人も。
次に多いのは、運転代行でせっかく帰宅したのに車で外出するケース。コンビにまで買物、忘れ物を取りに戻るなど。いずれも、代行車の中で仮眠をとり、酔いが醒めたと勘違いするのだろう。
アルコールの代謝時間を知らないための悲劇である。
一晩寝て、翌朝の出勤時に飲酒運転になったケースもある。
代行で帰るからと気が緩んで多量に飲めば、翌朝(あるいは夕方まで)になっても酒気は抜けない。これも代行の落とし穴と認識したい。
運転代行にまつわる教訓
教訓1)原則は「飲んだら乗るな」ではなく、「乗るなら飲むな!」
運転代行に頼ると「落とし穴」がたくさん!
教訓2)代行は飲み終わってからでなく、はじめに手配!
運転代行はすぐ来ないことを忘れずに。時間を決めるのは飲みすぎないためにも効果的。
教訓3)「代行で帰る」という言葉は信じるな。同席者は代行に乗るところまで確かめよ!
酔っている人の言葉を信じてはいけない! 理性がマヒするのが「酔い」なのだから。
教訓4)代行を頼むなら、かならず自宅の駐車場まで!
自宅近くで降りる例が一番多い。自宅周辺の道順を記した地図などを携帯する、代行車を帰す前に自分の 目的地に間違いないか確認する。少しの距離だから大丈夫などとは考えない。
教訓5)代行で帰っても外出は禁物! 翌日も運転しないで!
アルコールが抜けるには日本酒1合(ビールなら500ml・焼酎25度で100ml)で約4時間かかる。3合以上飲んだら、翌朝残っていると考えてまず間違いない。運転代行で帰ったら、当日はもちろん翌日も運転はダメ。翌朝運転するなら、1合程度に量を控えよう。