アルコール・薬物・その他の依存問題を予防し、回復を応援する社会を作るNPO法人「ASK(アスク)」の情報発信サイト

活動履歴

第7回ASK依存症予防教育アドバイザー養成講座を開催しました

2021年12月11日・12日、第7回ASK依存症予防教育アドバイザー養成講座を開催しました。
この事業は、厚生労働省「令和3年度依存症民間団体支援事業費補助金」を受け、受講料無料で実施しています。
この講座の特長は、アルコール・薬物・ギャンブルを中心とした幅広い依存症の、当事者・家族・支援者が一堂に会し、対等な立場でお互いから学び合うこと。参加者がリソースそのものです。

第6回・第7回の募集に対して120名の応募があり、前年度からの優先枠18名(コロナ禍で職場の許可が得られないなどの理由で2020年度の参加を見合わせた方々)を合わせ、領域・職種・地域などのバランスをとって選考。第7回も24名での開催になりました。
開催時、国内の第5波はすっかり収束していましたが、海外でのオミクロン株への警戒から入国制限が強まった時期でした。
会場の東京(四谷)に、首都圏に加えて、北海道・宮城・愛知・新潟・京都・奈良・大阪・岡山・福岡・熊本から参集。冒頭から休憩時間のたびにあちこちで活発に名刺交換が行なわれ、換気とディスタンスに配慮しながらも、熱く語り合い、お互いの経験を分かち合うことができました。
アルコールの当事者が3名、家族が2名、薬物の当事者が2名、家族が1人、ギャンブル当事者が1名、家族が2名(1名は薬物と重複)、クレプトマニア当事者1人。支援者は医師・看護師・ソーシャルワーカー・公認心理師・大学教員・弁護士・テレビ番組ディレクター・コピーライター……と多岐にわたっており、当事者・家族で支援者が多いのも特徴でした。
今回も、オンラインゲーム依存のユニットは、講師と会場をZoomでつなぎました。

最終テストと提出物などから総合的に審査し、24名全員が合格しました。
第7回養成講座のようすを写真でどうぞ。最後に受講者の感想もあります。
なお、来年度も補助金申請の上、実施の予定です。決まり次第、お知らせします。

アドバイザー養成講座画像

アドバイザー養成講座画像

アドバイザー養成講座画像

アドバイザー養成講座画像

アドバイザー養成講座画像

アドバイザー養成講座画像

アドバイザー養成講座画像

アドバイザー養成講座画像

アドバイザー養成講座画像

アドバイザー養成講座画像

アドバイザー養成講座画像

アドバイザー養成講座画像

アドバイザー養成講座画像

養成講座を受講して(認定アドバイザーの感想)

【当事者】

●アルコール当事者(京都)
私はアルコール依存症の当事者の立場です。今回受講してまず感じたのは、ギャンブルや薬物、ネット・ゲームの依存もアルコール依存と多くの共通点があり、どの問題も我が事なのだということでした。
自助グループなど、依存症に関わる人の中にいると、知らないうちに当たり前のようになっている当事者感覚も、まだ依存症の人に出会ったことがない方々にとっては、「何故?どうして?」という部分がたくさんあるように思いました。
自分の経験や感情の動き、回復までの率直な思いの数々を、そんな方々にどのようにお伝えしていけばよいのか、深く考えさせられる2日間でした。
また、依存症は回復できる病気であることを、自分の身をもってお知らせできるように、自分自身が爽やかに回復・成長の道を歩み続けたいと、心から思わせていただきました。
何より、多種多様な立場の皆さんとの出会いから、ひとりの力より連携する力の大きな可能性を見出すことができました。これから皆さんと手を繋ぎながら、活動を通して、正しい知識と思いやりある社会を創造する一助となれれば幸いです。

●アルコール当事者・社会福祉士・精神保健福祉士(岡山)
私が本講座の受講を通じて最も強く感じたことは、講師・運営の方々、7期受講生の仲間達の熱量の大きさでした。そして、本講座の受講を通じて最も大きな収穫は、7期受講生の仲間とのつながりです。
私は28歳の時にアルコール依存症と診断され、4回の精神科病院の入退院を繰り返し、借金・離婚・失職等を経験しながら孤立していきました。しかし地域の断酒会の回復者に出会い、断酒会の仲間の中で断酒継続して10年経ちます。
アルコール依存症の回復の過程で、再婚して夫となり、2児の父親になりました。依存症が回復できる病気であることを示したい、偏見・差別を無くすために社会を変えたいという想いを持ち、38歳で4年制大学に入り直し、精神保健福祉士(精神保健)、社会福祉士(社会福祉)、第一種衛生管理者(産業保健)の国家資格を取り、精神科病院のソーシャルワーカーとして精神科医療に飛び込みました。
しかし精神科医療の中においても、依存症が回復できる病気と認識されておらず、偏見・差別にさらされている現実に直面しました。現実と理想とのギャップの中で一人の力の限界を感じていた時に、依存症予防教育アドバイザーとして活躍している先輩方との出会いがありました。アドバイザーの方々の本気で社会に伝えたい、本気で社会を変えたいというエネルギーと姿勢に感動し希望を持ったことを覚えています。その時には依存症予防教育アドバイザーになりたいと強く思うようになっていました。
2日間を通じて、依存症のジャンル毎の当事者感覚と必要なサポートについて正確な知識と感覚を取り入れることができたと思います。
また、本講座の醍醐味はバックボーンが異なる当事者や家族、支援者の横のつながりであると感じています。バックボーンは違うけれども、熱い想いと冷静な知識を共有しながら、同じ目的に向かって成長し続けられる仲間の一員に加われたことを誇りに思います。同期・先輩方と依存症予防教育活動を通じてご一緒できると思うと、今からワクワクしています。

●アルコール当事者・臨床心理士(大阪)
様々な依存症から回復された方々や、様々な立場で支援をされている方々と接することで、視野が広まったとともに、皆さんのやる気に刺激を受けて、私もしっかりと活動していこうと決意することができました。

●薬物当事者・看護師(東京)
養成講座では、基礎的な知識から応用が利く知識や実践が行なわれ、非常に勉強になりました。
私は依存症当事者として参加させていただいたのですが、当事者でない参加者の方も何らかの形で依存症当事者の支援に関わっておられ、2日間は講義の時間はもちろんのこと、休憩時間も様々な方から刺激を受け、勉強になりました。
特に、印象的だったのはロールプレイを全員行なったことです。
断り方を学ぶという内容だったのですが、実際に行なってみると「断る」という行為が日常の生活の中では滅多にしておらず、慣れていないことに気づかされました。
自分が依存性物質の使用に誘われたときに、知識だけではなく断るという行為をできていたら、その後の人生が変わったのではないかと、当時を思い返しながら自分の当時の未熟さを今一度見つめなおすきっかけになりました。
印象的だったのは他にも挙げきれないほどあるのですが、総じて多くの気づきと学びに満ちた養成講座でした。
今後は依存症予防教育アドバイザーとして、今困っている人を一人でも助け、これから困る人を少しでも少なくできるように活動していきたいと思います。素晴らしい2日間をありがとうございました。

●ギャンブル当事者(奈良)
参加させていただき、ありがとうございました。
『世界が広がりました!』『行動を起こしていこう!』
そう思った2日間でした。
依存症に関係するさまざまな立場の方々と顔を合わせ、共に予防教育を進めていこうという熱意・モチベーションに、胸が熱くなる思いでした。
そして、私一人で取り組んでいくというよりも、依存症予防教育アドバイザーの仲間たちの力を結集して取り組んで行こうと思いました。
私の回復のターニングポイントになっています。不安もありつつ、今後の展開にワクワクした気持でもいます。このような機会をいただきありがとうございました。行動でお返ししていきます!

●クレプトマニア当事者(東京)
2日間にわたり、とても充実した内容の講義を受講することができました。
もともとの資料が充実していることはもちろんのこと、講師の方々のお話がとてもわかりやすかったです。そして、実際に講習会の時に行なっている工夫やスライドのアレンジ方法を実体験を交えながら伝えていただいたので、今後どのように活動を行なっていくかのイメージが膨らみました。
ただ知識の提供ではなく、「実践的なアドバイザーを育成する」内容だったと思います。
また、会場で講義が行なわれ、同期の方々とリアルな交流ができたこともとてもよい経験となりました。
私はいろいろと依存症啓発活動を始めたら、たちまちコロナ禍になってしまい、リアルな交流はほとんどしたことがありませんでした。実際にお会いできたことで、同期や講師の方々のエネルギーに直に触れることができ、大きな力をいただきました。
そして、講義のいろんな場面で、「一人で頑張ろうとする必要はない、誰かと一緒にやりましょう」というお話がありました。ついつい一人で抱え込んでしまいがちなわたしにとっては、これは本当にありがたいアドバイスでした。
アドバイザーには当事者・支援者・家族、いろんな職業・年代・地域の方々がいらっしゃり、一緒に活動をすることでいろんな可能性が広がっていくと思います。いろんな方と活動ができると思うと今からとても楽しみです。
いろんな方と活動するイメージを高める上で、講義の中でオンライン形式の講義を体験できたのもとてもよかったです。オンラインでつないだ講師の先生の九州弁を聞きながら、オンラインだからこそできることもたくさんある、こういう方法もいいなと思うことができました。
オンライン形式はこの2年で急速に広がってきた形式ですが、それを講義に盛り込んでいる柔軟性がとてもありがたかったです。こういうところからも、その時々で柔軟にアレンジしてよいものを作ってくださいというメッセージを感じました。
「しっかりとした基本資料の土台がある、それを自分の経験をもとに少しずつアレンジし、できることをやろう」「遠慮なく他のアドバイザーの力を借りて、いいものを作っていこう」
そう思えた、大変充実した2日間でした。
このような充実した講義を無償で提供いただけたことに本当に感謝しております。活動を通じて還元していきたいと思います。

【家族】

●アルコール家族・看護師(大阪)
先に受講させていただいたASK飲酒運転防止インストラクター養成講座で、アルコール問題の基礎を学び、知っていたら、もっと健康的な飲み方が家族や友だちとできていたのにと思いました。
今回、依存症予防教育アドバイザー養成講座を受講し、あらためて正しい知識の普及と予防活動の必要性を実感しました。
アルコール依存症家族として2人でできること、医療者としてまず自分の職場でできること、それぞれ小さなことからでもいいので行動していこう思います。
現在、私の病院では入院翌日には地域連携室とカンファレンスを行ない、治療が終わった時点で患者さんには早期に転院、退院をしていただいます。
この連携室スタッフへアルコール依存症への正しい知識をお伝えし、適切な治療の後に専門医療や自助グループへ患者さんが繋がることができるよう、医療者の偏見是正に勤めていきたいと考えています。
そのために、今回ともに学んだ様々な立場の方々のお力もお借りしながら、思いを形にしていきたいと思っています。

●ギャンブル家族(愛知)
最初から最後まで、内容盛りだくさんでしたが、研修してくださる先輩アドバイザーの方々のお話に吸い込まれ、楽しみながら、身近に感じながら、全ての研修を聞くことができました。
研修を聞きながら自分なりにどう伝えようか?と、それぞれの回で妄想しながら(笑)、必死にメモを取りました。第7回の同期の仲間や、先輩方とコラボ等して、より伝える工夫ができるよう頑張ります。
研修を受けて、知識のアップデートだけではなく、合わせてライフスキルを高めていくことがとても大切なことだとわかりました。ギャンブルの家族の話となりますが、「お金は貸さない!」という知識はあっても、断り方って教えてもらえません。
結局自分なりの断り方になってしまうので、新しく立ち上げる家族の会では、繰り返し練習して正しい対応をできるよう、サポートにも使えるなと思いました。
まずはホームのギャンブル依存症家族の会で早速実践して、実践報告シートを提出したいと思います。

●薬物・ギャンブル家族(北海道)
講座の内容は、どなたでもわかりやすく、生活に役立つ内容で、直ぐに周りの皆さんにお伝えしたいものでした。そして、なんと言っても講座に参加していた方々とのご縁と、貴重なお話が財産でした。
私は、薬物依存、ギャンブル依存の家族であり、支援者です。自分も、家族への対応を見直すいい機会にもなりました。なかなか周りに言えないことが、あの会場に集ったメンバーとは、初めてお会いしたにも関わらず何でもお話しできたこと、学びあり、心が救われた2日間でした。もっと皆さんと交流する時間があったらと、思いました。
当事者にとって、周りの理解とサポートは、大変重要であり、正しい知識を一人でも多くの皆様に、お伝えすることは、急務だと確信いたしました。今は、とにかく早く講座開催することを目標に、一人でも多くの理解者を増やしたいと意気込んでおります。

【支援者】

●訪問看護師(神奈川)
精神科病院でのアルコール依存症病棟の勤務経験を経て、地域で働きたいと現在は訪問看護ステーションにて働いております。精神科の訪問看護ステーションですが、依存症の方とのかかわりがほぼなかったスタッフがいたり、地域でも依存症の方への知識や対応はばらつきがあるように感じています。アルコール依存症の方は訪問を断わられる、飲んでいたら訪問しないなどということもあると聞くこともあります。偏見というより、対応が難しい、わからないと思われることが多いのかなと感じております。もちろん、私も模索しながら対応している状況です。
そのような中でも、自分でできることがあれば何かしたい、と思いつつ、何をどのようにすれば良いのかわからないと思っていました。
今回知人の紹介で養成講座のことを知り、受講。様々な立場の方とつながれて、知識を伝えるとはこんな風にすれば良いのかなど、わかりやすい講義で構成されておりました。
受講後もすでに活躍されている方々ともつながれるシステム、一緒に何かできるという心強さ、このような研修に無料で参加でき、アドバイザーとして活動ができるということ、ありがたく思います。
今後、地域包括システムが構築されていくこともあり、その中で依存症についてどのように組み込まれていくのか、地域での支援者として、自分にできることを模索しながら活動していけたらと思います。

●ネット・ゲーム依存の予防回復に携わる心理師・アルコール家族(東京)
私は亡くなった父がアルコール依存症の当事者で、かつ現在ネット・ゲーム依存の予防回復に携わる心理師として活動しています。
養成講座に参加して、依存症について知識を改めて整理できたことはもちろん大きな実りとなりましたが、それと同時にさまざまな依存症の回復者・支援者の方々の体験をお聞きする中で、依存症が予防できること、回復できることを、多くの人に伝えていきたいという思いを改めて強く感じました。
私がもっと早くこの情報やスキルを知っていたら、父を回復に導くことができたかもしれないし、今も一緒に人生を歩めたのかもしれません。しかし、それは叶うことはありません。
だからこそ、これからは私自身がアドバイザーとして活動することで、父の思いを繋いでいきたいと思います。
また新しい概念であるゲーム依存に携わるトップランナーとなり、正しい知識や予防のスキルを伝えていくことで貢献してまいります。講座を企画・運営してくださったASKや先輩アドバイザーの皆さま、心から感謝申し上げます。

●大学看護学群助教(宮城)
養成講座では、講義の内容がとても濃く、たくさんのことを学ばせていただきました。
講座の内容だけでなく、依存症の予防教育に関心をもつ仲間に会えたことも大きいです。
仲間の背景は違えど、予防教育の活動の場や内容を語ることで、予防教育で伝えたい思いも共有できました。今後、様々な方とコラボして予防教育をしていきたいと、私自身がパワーをいただきました。

●大学社会福祉学科助手(埼玉)
あの2日間で同期の皆さんと共有したゆるやかな結びつきも心地よく、非常に有意義な時間を過ごさせていただきました。
今後は、所属機関以外の場所でも、どんな啓蒙・教育活動をしていけるのか、アンテナを張っていきたいと思っております。

●大学保健科学部看護学科講師(熊本)
印象に残ったのは、体験を話して下さった当事者の方々が「(当時は)どうでもよかった。いずれ死ぬと思ってたし、それで良いとも思っていて、こんな歳まで生きている予定ではなかった」と話されていたことです。
心理学的な当事者の心理という知識はありましたが、死がとても身近で、そこまで追い込まれた気持ちの中で、薬物などの依存物質に頼らざるを得ない状況があったことを知ることができました。そして、そのような状況から実際に回復して社会生活を送っていらっしゃる姿を知ることができ、大変、感銘を受けました。今後、活動を行なう際は、ぜひ、当事者の声を紹介していきたいと思います。

●弁護士(東京)
依存症についてより身近に感じることができた。当事者の方の多くが依存状態にあった際、死という選択がとても近くにあるということを知り、依存症が回復できる病気であるということを、多くの方に知っていただく必要があると感じた。
客観的・一般的な知識の勉強にとどまらず、当事者の方の話を聞くことができ、身近な問題と感じられたことがよかった。教材もとても充実しており、今後自身がそのテーマについて話をすることに安心が持てた。

●コピーライター(東京)
イッキ飲み・アルハラ防止のキャンペーンやアルコール関連問題啓発週間のポスター制作に、長年携わってきました。
養成講座では数々の学びを得ることができたうえに、みなさんの積極的でフラットな姿勢に、とても感銘を受けました。
エネルギーをたくさんいただいて、自分もやれることをやろうと、踏み出す気持ちになれました。

●フリ―ランスのテレビ番組ディレクター・精神保健福祉士(東京)
とても貴重な機会をいただきました。改めて、主な依存症それぞれについて、基礎知識をじっくり復習できたことが大きかったです。
自分は今まで、どちらかというとアルコールや薬物をメインにしてきたので、ギャンブルやネット・ゲームに関しては詳しく知らないことも多く、現状を正しく知っておく上で本当に勉強になりました。
また、それらをすべて自分一人で伝えていくのはかなり荷が重いというか、詳しい部分とそうでない部分があることを、今回の講座でまざまざと思い知りました。そうした意味でもさまざまなバックグラウンドを持つ仲間と繋がれたことは大きいです。
自分が詳しくないことでも、「この人に聞けばいい」「困ったらこの人の力を借りればいい」と思える人脈ができたことは本当に何物にも代えがたく、今後の活動も決して一人でやっていくのではなく、それぞれが得意分野/苦手分野を補い合って進めていけば、なんとかできそうだという手ごたえを得ました。
今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。