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報道に配慮を!依存症支援団体からの声明

家族の立場で依存症支援に取り組む団体の連名で、以下の声明を出しました。
依存症からの回復途上にスリップはよくあることですが、違法薬物の場合は、逮捕につながるという厳しさがあります。
回復の場であるダルクへの差別偏見が助長されないよう、また実名報道で回復途上の若者たちの将来を潰さないよう、配慮した報道をお願いします。

 


 

声 明

2024年5月12日

 

大型連休明けの5月8日朝7:40頃、京都府警木津署は、ダルクにおいて入寮者3名を覚醒剤取締法違反で逮捕しました。
警察からメディアへのリークがあったのでしょう。朝日新聞、産経新聞、京都新聞、朝日放送、読売新聞、毎日新聞、関西テレビ等が続々と報道。うち、産経・毎日・関西テレビは実名報道で、翌9日のセンセーショナルな家宅捜査の映像も含め、多くの記事がYahooニュースなどにも掲載され拡散されています。

家族の立場で依存症支援に取り組む私たちは、この事実に驚きと、悲しみでいっぱいです。
ダルクは、依存症者が安心して回復できる場である必要があります。
入寮者が逮捕されたことで、世間の人々は「ダルクは怖い!」と思ってしまうでしょう。
住民の反対運動がますます強まる懸念がありますし、悩んでいる家族や当事者からダルクに相談しようという意欲をそぐことになってしまいます。
また実名報道はデジタルタトゥーとなり、依存症者の将来を潰すだけで、なんの役にもたちません。

依存症やダルクに対する社会の無理解や偏見差別に、私たちは長年苦しんできました。
失敗しながら仲間の中で回復していく場所がダルクです。
家族は依存症者がダルクで回復の道を歩んでいることにどれだけ救われるか、このことをわかっていただきたいと思います。

私たちは、ダルクや依存症者が、差別偏見にさらされることがない社会を望みます。
この事件を契機に、依存症とダルクへの正しい理解が進むことを心から願い、依存症問題の正しい報道を求めるネットワークによる「薬物報道ガイドライン」を添えます。
メディアは、逮捕される犯罪という印象だけでなく、回復可能な病気であるという事実をぜひ伝えていただきたいと思います。

 

NPO法人 全国薬物依存症者家族会連合会(略称やっかれん)
理事長 横川江美子

NPO法人 ASK(アルコール薬物問題全国市民協会)
代表 今成知美

公益社団法人 ギャンブル依存症問題を考える会
代表 田中紀子

NPO法人 全国ギャンブル依存症家族の会
代表 大澤妙子

 


 

薬物報道ガイドライン

依存症問題の正しい報道を求めるネットワーク

 

【望ましいこと】
〇薬物依存症の当事者、治療中の患者、支援者およびその家族や子供などが、報道から強い影響を受けることを意識すること
〇依存症については、逮捕される犯罪という印象だけでなく、医療機関や相談機関を利用することで回復可能な病気であるという事実を伝えること
〇相談窓口を紹介し、警察や病院以外の「出口」が複数あることを伝えること
〇友人・知人・家族がまず専門機関に相談することが重要であることを強調すること
〇「犯罪からの更生」という文脈だけでなく、「病気からの回復」という文脈で取り扱うこと
〇薬物依存症に詳しい専門家の意見を取り上げること
〇依存症の危険性、および回復という道を伝えるため、回復した当事者の発言を紹介すること
〇依存症の背景には、貧困や虐待など、社会的な問題が根深く関わっていることを伝えること

【避けるべきこと】
〇「白い粉」や「注射器」といったイメージカットを用いないこと
〇薬物への興味を煽る結果になるような報道を行わないこと
〇「人間やめますか」のように、依存症患者の人格を否定するような表現は用いないこと
〇薬物依存症であることが発覚したからと言って、その者の雇用を奪うような行為をメディアが率先して行わないこと
〇逮捕された著名人が薬物依存に陥った理由を憶測し、転落や堕落の結果薬物を使用したという取り上げ方をしないこと
〇「がっかりした」「反省してほしい」といった街録・関係者談話などを使わないこと
〇ヘリを飛ばして車を追う、家族を追いまわす、回復途上にある当事者を隠し撮りするなどの過剰報道を行わないこと
〇「薬物使用疑惑」をスクープとして取り扱わないこと
〇家族の支えで回復するかのような、美談に仕立て上げないこと

 


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依存症支援団体からの声明 20240512