2024年9月7日・8日、第12回ASK依存症予防教育アドバイザー養成講座を開催しました。
この事業は、厚生労働省「令和6年度依存症民間団体支援事業費補助金」を受け、受講料無料で実施しています。
この講座の特長は、アルコール・薬物・ギャンブルを中心とした幅広い依存症の、当事者・家族・支援者が一堂に会し、対等な立場でお互いから学び合うこと。参加者がリソースそのものです。
第12回・第13回の募集に対して219名の応募があり、領域・職種・地域などのバランスをとって第12回は26名を選考しました。
開催時、インフルエンザの流行が重なっていたため、体温の確認、換気、椅子を1つ空きに座る、マスク着用を推奨するなど、感染防止対策を引き続き実施しました。
当日は、会場の東京(浅草橋)に、首都圏に加えて、三重・福井・京都・大阪・兵庫・香川・沖縄から参集。休憩時間のたびに活発にあちこちで名刺交換が行なわれ、熱く語り合い、お互いの経験を分かち合うことができました。
アルコールの当事者が6名、薬物の当事者が2名、ギャンブル当事者が3名。家族はアルコール2名・ギャンブル1名、摂食障害1名。支援者は精神保健福祉士・社会福祉士・看護師・公認心理士・臨床心理士・作業療法士・薬剤師・栄養士・教育コンサルタント・施設スタッフ・保護観察官・フリーランスライター……と多岐にわたっており、当事者・家族でもある支援者が多いのも特徴です。
最終テストと提出物などから総合的に審査し、26名全員が合格しました。
第12回養成講座のようすを写真でどうぞ。最後に受講者の感想もあります。
養成講座を受講して(認定アドバイザーの感想)
【当事者】
●アルコール依存症当事者(茨城)
どの依存症でも回復のプロセスは同じなんだと感じました。講師の先生方の、特に当事者としての体験談を交えてお話になる姿を見習いたいなと思いました。
●アルコール依存症当事者(福井)
私自身、断酒して10年を経過してアルコールで悩んでおられる方に何かお手伝いができないかと思い、今回参加させていただきました。講座では、様々な依存症の知識を学ばせていただきました。アルコール、薬物、ギャンブルなどの当事者、家族、支援者、講師の皆様との交流も大変素晴らしい体験でした。今回の講座を通じて、依存症予防教育の重要性を再認識するとともに、今回、学ばせていただいた3つの予防「発生予防」「進行予防」「再発予防」を広く伝いえていきます。
【バトン】しっかり受け取りました! 私も依存症予防教育アドバイザーとして、アルコール依存当事者としての経験と、今回学んだ知識を広く広める活動を行ってまいります。
●アルコール依存症当事者・薬剤師(香川)
講師の「痛みに応じた痛み止めをしようする」と言う言葉が印象的でした。胃痛、頭痛、骨折の痛みはそれぞれ薬が違いますが、ありとあらゆる痛みに効く薬もあります。それは麻薬です。これを方法に落とし込んだ時に、ありとあらゆる痛みに効く方法が行動嗜癖なのではないかと思いました。
●薬物依存症当事者・回復施設生活支援員(群馬)
ユニット毎の講義時間がちょうどよく、飽きず、内容も充実していました。体験談を交えた講義に大変共感を覚えました。2日間の講義期間中、参加者の多くの方と挨拶することができ、新たな繋がりが得られたことも大きな収穫でした。今後アドバイザーとしての活動だけでなく、セルフケアの観点からも参加者の方と交流の機会が得られればと思いました。
●ギャンブル依存症当事者(三重)
私自身、ギャンブル依存症当事者として自分の生活がどうにもならない状況でした。多くの同じ病気の仲間達から、回復に向かう為の支援をしていただきました。
依存症はとても巧妙で複雑で厄介な病気です。今回、様々な依存症について専門知識を教えて頂き、今後はこの知識を活かして、この病気に苦しむ当事者はもちろん、それに巻き込まれている家族や子ども達に対して、何か自分の出来る事を最大限活用してサポートして行きたいです。回復は素晴らしいと、胸を張って伝えて行きたいと思っています。
●ギャンブル依存症当事者・お笑い芸人(神奈川)
講師の方々の熱量。生き生きとしていてかっこよかったです。
●ネット・占い依存当事者・ルームNG運営メンバー(東京)
当日は全国から「依存症について学びたい」という意識の高い方々が集まり、こんなに多くの人が依存症について学ぼうとしているのか、と大変刺激を受けました。
また、私は障害があり、車椅子で参加させていただきましたが、スタッフの皆さんが自然にサポートをしてくださりとても安心して参加することができました。これは、ふだん参加している自助グループの「対等な仲間」という位置づけが、浸透しているからだと感動しました。
講座を受講して、依存症は根底に生きづらさがあり、人と繋がり続けていくことで、回復できる病気であることを改めて痛感しました。これから、生きづらさを抱えた人に「一人じゃないよ」と伝えたいし、支援者に対して、偏見などがないように自分の経験を踏まえて、伝えていきたいと思っています。
●摂食障害当事者・ルームE運営メンバー(千葉)
とても内容の濃い2日間で、気づきと学びが沢山ありました。素晴らしい研修で、時間が足りないくらいでした。回復した方や回復に向けて活動している方、支援者の方との交流はとても幸せな空間でした。アディクションから、コネクションと仲間の繋がりは回復には大切だと感じた研修でした。
私は10代の頃から長年摂食障害で悩んできましたが、治療を受けずになんとか結婚出産をしました。その後の生活というと、摂食障害に加えてアルコールの問題まで出てきてしまいました。アルコール専門病院通院中に、ASKのルームD、DAを紹介していただき繋がりました。そこで仲間との関わりにより回復を助けて頂き、アルコールなしでの生活に戻りました。そして、コロナ禍や子育て中にオンラインという無理なく続けられるという自分の居場所にもなりました。合わせて摂食障害のルームEに繋がったのは、ルームDAに同じ摂食障害に悩む仲間がいて紹介していただいたのがきっかけです。
今まで摂食障害というと、家族には理解されない、知人には、恥ずかしくてカミングアウト出来ず孤独との闘いでした。しかし、ルームEには同じ摂食障害で悩みながらも必死に生きている仲間がいて、自分だけではないと感じ、助けて頂きました。これからはアドバイザーとして運営側になり、自分の回復を助けてもらったように、仲間の回復を助けていけるよう活動していきたいと思っています。
●摂食障害当事者・ルームE運営メンバー(大阪)
とても有意義で楽しい時間だった。様々な貴重な出会いがあった。自分の知識の不足や誤解や偏見に気づくこともできた。ネットでしか知らなかった方々の生の話を聞けたのも良かった。正しい知識を得て偏見是正に取り組むこと、実際に行動することの重要性も痛感した。つらいことやマイナス感情をおもてに出せない社会、ライフスキルの軽視、失敗を許さない社会が依存症につながっていると思った。
●クレプトマニア当事者・ルームK運営メンバー(千葉)
ロールプレイや、他の参加者の方とセッションや会話をする機会が多かった。
また、講師の自身の回復に至るまでのストーリーも聴くことができ、自分が話すことになった時をイメージしやすかった。
【家族】
●アルコール依存症家族・AC(沖縄)
自分のホームアディクションであるアルコール以外のアディクションは知識が薄かったのですが、最新の情報を知ることができたので、すぐアウトプットして行きたいと思ってます。
●ギャンブル依存症家族(東京)
今回、本養成講座に参加し、大変貴重な経験をさせていただきました。アドバイザーの方々の実演を目の前で見れたことで、自分自身の実践の場を想像することができました。また、グループワークをはじめ、受講者が主体的に参加できる工夫がなされていて、より積極的に学ぶことができたと感じています。私はギャンブル依存症の家族の立場ですが、これまであまり関わる機会のなかった他の依存症の当事者および支援者の方々のお話を伺うことができ、繋がりができたのことも大きな収穫でした。講座で学んだ知識やノウハウ、そしてこの繋がりを糧に、依存症の正しい知識とライフスキルの重要性、そして回復があることを社会に伝えていきたいと思っています。
【支援者】
●精神保健福祉士・地域生活定着支援センター相談員(千葉)
依存対象の種別を問わず、また、立場の違いを超えて、ただ「依存症に対する正しい知識の普及啓発を以て、差別偏見を無くしていこう」と志す人達が皆で学びを深める場。全員が主体的に参加して、交流も盛んでした。いつもの孤独が吹き飛ぶコネクションで、多くの仲間ができました。資格を取って終わりなものが多い中、依存症予防教育アドバイザーは、そこからがスタート。これから仲間達と一緒に創ってゆく企画が楽しみです。今回、参加することができて、本当にうれしかったです。運営側の皆さんも土日朝早くからのご準備など、心より感謝申し上げます。
●看護師・保健師・公認心理師(東京)
依存症支援において感じる【孤立感】や【孤軍奮闘感】。この研修は、私たち自身が、アディクションの反対はコネクションだと実践できる素晴らしい機会になりました。すでに、同期のメンバーと来月までに会う予定を組むことができています!
●アルコール依存症病棟看護師(埼玉)
熱意のある方が多かったです。自己紹介は1分じゃ足りなかった人の方が多かったのでは(笑)。講師の先生方は本番さながらに実演をしてくださって、実際のイメージがつかめたような気がします。
ぬり絵に例えると、講義が下絵で体験談が色塗りのような感じがしました(例え下手ですみません)。私は当事者ではないので、色を塗ってくれる方と一緒に活動したいと思っています。名刺交換も盛んに行われるので、名刺を持っている人は持っていった方がいいです。色々な方と知り合いになれるので、モチベーションや夢が広がります。
資格取得して今思うことは、まずは自分の住んでいる地域で活動をしようということです。すでに様々な方が取り組んでいると思いますので、そのような方たちと出会うところから始めていきたいと思います。活動を広げるにあたり、容易ではないことも多いと思いますので、そういう時はここに集った仲間の助けを借りながら、やっていきたいです。
12期のみなさま、2日間お疲れさまでした。また、お会いできる日を楽しみにしています。
●精神保健福祉士・地域生活定着支援センター相談員(千葉)
ギャンブル依存への知見が足らず、今の日本の現状が大変恐ろしい方向に向かっていると思った。国やマスコミの主導がギャンブル依存を促進する方向に思えて、正直なところ恐怖しかない。普段は、薬物・アルコール依存症しか守備範囲で無かったが、これからは積極的にギャンブルの知識もブラッシュアップしていきたい。
●教育コンサルタント(兵庫)
これまでも児童生徒、教職員、保護者向けの研修を行ってきていましたが、依存症への偏見は少なからずあったと思います。しかし、今回の養成講座において正しい知識を学ぶことで「この正しい知識を子どもたちや子育て支援を行う方々に伝えていかないといけない」と強く感じました。知識の幅も広がり、今後の活動に活かしていきたいと思っています。
●フリーランスライター・編集者(兵庫)
さまざまな依存症の当事者の方が講師で、生の声を聞かせてもらえる貴重な講義がみっしりで濃密な二日間の講座構成でした。初めて知ることが多く、知識としての学びも多かったのですが、体験の振り返りと、回復の過程の語りには、揺れる思いが込められていて、胸に迫るように届いてきました。
私自身、当事者でリカバリーの最中なので、共感することも多かったですし、先を行く先輩の励ましのエールとも聞こえて、そうしたものも、自分が予防教育を実践する際に、大事にしたいと思わされました。
また、他の受講生の方々との交流しやすいような場づくりのおかげで、講義の合間はいろんな方とお話ができて、限られた時間だからこそ、出会いを大事に感じて連絡先を交換したり、「縁」もたくさんいただいたと感じています。予防教育活動でも、積極的につながって、今後にいかしていきたいです。講座は二日間ですが、ここが始まりだと確信できる特別な時間となりました。同期のアドバイザーの方だけでなく、先輩たちともつながって、広く動いていきたいです。
●作業療法士(東京)
講座では、予防教育をする上で当事者の体験談が、知識だけでなく感情に訴える点で大事な事と改めて学びました。また今後、今回参加された皆さん、先輩アドバイザー、これから講座を受ける方々とも積極的に連携をとっていきたいと思います。
●公認心理師・臨床心理士・スクールカウンセラー(京都)
この養成講座の企画、仕組み、の妙を得ていることに感心いたしました。
依存症の体験をされ、それを手がかりにして自分育てに取り組み、このアドバイザーを目ざし活動しておられる方、これから活動されようとしておられる方、また、依存症の予防教育、当事者や家族の方への看護や支援に携わっている支援者が集い、さまざまな依存症について、知識と共に体験も交えながら教わり学んでいく。
そこでは、発生予防、進行予防、再発予防などについて、長年にわたり携わってきておられる依存症予防教育アドバイザーの方から学び、それぞれの立ち位置からの支援の計画をグループで伝え合い、気づきを貰い合う。この流れのなかに身を置いていると、自然に依存症への理解が深まり、支援者として関わってきている自身のあり方を振り返り、今後の活動のイメージがもてるようになってくる自分に気づかされました。
この養成講座には、予防教育、当事者や家族への支援をしていくときに、自身を大切にしながら、「相手の世界に寄り添う支援」について、身を通して学び教わることのできる在り方があるように思いました。この感覚を、今後の活動に大切に生かしていきたいと思っております。
●保護観察官(東京)
支援を通じて、相手を大切にしながら、自分を大切にする伝え方ってどうしたらいいのか悩んでいたのですが、研修やロールプレイを通して自分の意思と感情に正直になり、自分自身を感じるのが大切だと実感しました。実践に生かしたいと思います。
また、セルフケアのところでは、講師の実体験にすごく共感しました。自分自身、誰かに認められることで存在価値を感じていていたことに気が付きました。ライフスキルは依存症の文脈だけでなく、いい子を頑張ってきた大人や自分を責めすぎてしまう人にも通じるものがあると思いました。
予防教育や今後の活動を通して、自分の声にも耳を傾けられたらいいなと思います。