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活動履歴

第13回ASK依存症予防教育アドバイザー養成講座を開催しました

2024年11月30日・12月1日、第13回ASK依存症予防教育アドバイザー養成講座を開催しました。
この事業は、厚生労働省「令和6年度依存症民間団体支援事業費補助金」を受け、受講料無料で実施しています。この講座の特長は、アルコール・薬物・ギャンブルを中心とした幅広い依存症の、当事者・家族・支援者が一堂に会し、対等な立場でお互いから学び合うこと。参加者がリソースそのものです。

第12回・第13回の募集に対して219名の応募があり、領域・職種・地域などのバランスをとって第13回は27名を選考しました。
開催時、インフルエンザの流行が重なっていたため、体温の確認、換気、椅子を1つ空きに座る、マスク着用を推奨するなど、感染防止対策を引き続き実施しました。
当日は、会場の東京(浅草橋)に、首都圏に加えて、北海道・宮城・石川・三重・岐阜・滋賀・大阪・兵庫・徳島・高知・福岡から参集。休憩時間のたびに活発にあちこちで名刺交換が行なわれ、熱く語り合い、お互いの経験を分かち合うことができました。
アルコールの当事者が5名、薬物の当事者が1名、ギャンブル当事者が2名、ゲーム当事者1名。家族はアルコール2名・薬物1名、ギャンブル2名。支援者は医師・公認心理師・臨床心理士・精神保健福祉士・看護師・保健師・薬剤師・居場所支援スタッフ・LGBTコミュニティ支援者・大学講師・記者……と多岐にわたっており、当事者・家族でもある支援者が多いのも特徴です。

最終テストと提出物などから総合的に審査し、27名全員が合格しました。
第13回養成講座のようすを写真でどうぞ。最後に受講者の感想もあります。
なお、来年度も補助金申請の上、実施の予定です。決まり次第、お知らせします。

養成講座を受講して(認定アドバイザーの感想)

【当事者】

●アルコール依存症当事者(神奈川)
皆さんの熱意を感じてとても良い経験をさせて頂きました。内容もとても良く、たいへん勉強になりました。今後も研鑽を重ねて、当方の日々の活動が「今、困っているご本人とご家族の一助となれれば良い」と思っております。また、地域における支援者や医療従事者に依存症の正しい知識を知って頂くために、今回学ばせていただいた事を活用させて頂きたいと思います。

●アルコール依存症当事者・内科医(高知)
コロナ禍以降、依存症のありようもだいぶ変わっているということも学ばせていただきました。今後の啓発活動にアップデートした知識が使えることは強みです。無事全員合格したあとも、13期としての連携もとれており、地域も立場も超えたネットワークに参加できたことをたいへんありがたく、また光栄に思っています。今後は名刺にも肩書を印刷して、活動に励もうと思います。こうした機会を継続的に提供してくださっている運営スタッフのみなさまに深く感謝申し上げます。

●アルコール依存症当事者(大阪)
不安いっぱいで現地に向かいましたが、全国の皆さんとお会いでき、同じ時間を共有していく中、本当に充実した空間で楽しく学ぶことが出来ました。
皆さんと名刺交換できたり、一緒にグループ分けで話し合えたり、13期の皆さんとこれからも色々なことを共有し合いながら成長していきたいと感じました。
私はアルコール当事者ですが、まったく違う道のりを歩んできた方々との出会い、支援者としての気持ちや活動等を聞かせていただけた事は大変学びになりました。これからも率先して、沢山の学びに努力していきたいと思っています。足踏みしていた医療機関や学校等への活動も、自ら足を運んで依存症予防のアピールを実行していきます。

●アルコール依存症当事者(滋賀)
ここ7年ほど県の補助金を利用しての市民公開セミナーを滋賀県断酒同友会の主担当として開催して来ましたが、一般の方の参加は1回に10~20人程度と少なく、アルコール依存症に興味を持っていただくことは難しいものだと大きな壁を感じていました。そんな中、身近な方がASK依存症予防教育アドバイザーになっておられることを知り、自分の依存症についての考え方のブラッシュアップと、人に伝える良いやり方を身につけたいと考えて養成講座を受けさせてもらいました。13期養成講座では、依存症をなんとかしたいという思いだけで集まった様々な経歴・職種・年齢の方々やスタッフの方々の熱を感じて、私も熱くなりました。また、しっかりしたシナリオをベースに伝え方を教えていただき良かったと思っています。うまく伝えるためには言語情報だけではなく、話し方などの工夫が必要だと感じています。

●アルコール依存症当事者・公認心理師・臨床心理士・精神保健福祉士(大阪)
第13回受講のメンバーのグループラインでは、メンバー同士さっそく合格の喜びを分かち合っていました。依存症への正しい知識を得ることができましたし、アドバイザーになったことでつながりも広がります。今後、パワポを駆使した予防教育や回復のお手伝いで、医療関係者や先ゆく仲間たち、その他支えてくれた人たちからいただいたものを、社会にお返ししていくことができたらと思います。

●薬物依存症当事者・居場所支援スタッフ(東京)
全国の同じ志を持った仲間と出会えたことが嬉しかったです。そして、刺激を受け「私も頑張ろう」と思えました。

●ギャンブル依存症当事者(岐阜)
自身の嗜癖だけでなく、他の依存性の幅広い知識を学ぶ事ができました。また様々な職業の方と繋がれ、今後の活動、相談の幅が広がったと思います。これからも仲間と共に繋がり続けていきたいと思います。

●ゲーム依存症当事者・ルームNG運営メンバー(福岡)
依存症予防教育アドバイザーの講習はとても有意義な時間で、私は自助グループや病院のデイケアで当事者と関わる事は多いものの、病院以外の関係者と関わる事はほぼなかったので、凄く大切な時間になりました。自助グループ等とはまた違う仲間と出会った気がしました。依存症をどうにか支援したいという思いがある人達に囲まれて、自分自身も身が引き締まる思いでした。とても貴重な体験をありがとうございます。これからは自分自身の経験や回復していく過程を、誰かの心に少しでも残るような形にできたら嬉しいと思ってます。それに依存症の正しい知識や新しい知識、ライフスキルで、今後少しでも生きやすくなるよう、依存症予防教育が出来たらと思っています。

【家族】

●アルコール依存症家族(東京)
2日間、いろんな職種の方々と共に受講しました。私はアルコール家族ですが、他の依存症も多くの共通点があると感じました。講師の方々のお話しが迫力と熱意と分かりやすさに、圧倒されました。予防教育には「ライフスキル」が欠かせなく、生きていくためにも必要で、私自身も意識しながら過ごしていきたいです。偏見が根強い依存症。そして回復ができる病気ということを、私の経験と共に伝えていきます。私一人ではなく13期のメンバーやアドバイザーの先輩方のお仲間がいるということは心強いです。

●アルコール依存症家族・看護師・公認心理師・助産師(東京)
養成講座は、具体的でわかりやすく、また当事者の体験も織り交ぜられての内容だったので、実際に行う場合の知恵もあって一歩踏み出しやすいと思いました。一年以内に、どこで実践するか、仲間と話しながら計画して参ります。

●薬物依存症家族(徳島)
今年こそはと思い切って申し込み、ドキドキしながら受講日を待ちました。当日、そこに集ったのは志を同じくした様々な地方の様々な立場の方たち。そして講師を務められているのは憧れの先ゆく方たち。その場に自分が居る事が半ば信じられない気持ちで、しかし2日間を無駄にすまいと講義に真剣に取り組みました。そして参加者同士の交流がとても深く持てたことも私にとっては宝物のようです。晴れてアドバイザーに合格したのでより一層自覚を持って依存症の予防教育に取り組みます。

●ギャンブル依存症家族(東京)
丸2日という日程で盛りだくさんの内容でした、自分のためにも、またこれから自身がアドバイザーとして多くの方に伝えるべき内容として本当に役に立つし、学びになることが多くて、あっという間でした。
私は夫のギャンブルの問題で自助グループに繋がり、まだ依存症の問題に関わるようになって数年ですが、これから先、夫や娘そのほか、自分の大切な人がいつ巻き込まれてもおかしくない依存症の問題。一人でも多くの方に依存症のことを知ってもらい、今より少しでも世の中が生きやすくなっていくように微力ながら自分のできることをやっていきたいと思っています。また、13期の方との出会いは、私に新たな価値観や世界の広がりを与えてくれました。これからはこの繋がりも活かしながら、予防教育に関わっていきたいです。

【支援者】

●看護師・保健師・看護大学講師(岐阜)
私にとって支援者として、また家族として本当に意味のある機会を持たせていただき、運営していただいた皆様に心より感謝申し上げます。

●看護師(三重)
回復者の方、ご家族のご参加が多くて大変驚きました、しかしこれに意味があると思いました。実際回復していく過程などを聞く事ができて、希望が持てたと同時に勉強になりました。これからいろいろな場面で研修も積極的に発信していきます。

●看護師・公認心理師・助産師(石川)
受講の1番のきっかけは、一緒に活動していたセクシャルマイノリティ当事者の人が不法薬物の使用で検挙されたことでした。新聞で実名報道されたことで、会自体が大きなバッシングを受け、会の存続のために奔走することとなりました。
本来は、身近な友人として寄り添った行動をとりたいと思っていたのに、自分の薬物依存に対しての知識が足りず、かえって彼を傷つける対応を取ってしまいました。「私が何とかしないと」のような驕った自分が悔やまれてなりませんが、今は自分の出る幕ではないと言い聞かせております。今後は自分ができる事にまい進したいと思います。
現在、性教育活動で出会う子どもたちにも様々な依存症が入り込んでいます。先生方も保護者の方も手だてを模索しているのが現実です。今回の研修で、10代に正しい知識を伝える事がいかに大切かを知りました。そして同じ受講者や、講座を担当して下さった先生方に、「依存症は回復する」ことを身をもって伝えて頂き、私の中に「回復の実感」として刻むことが出来ました。
今後は話を聞いてくれる対象者に合わせてライフスキルを伝えられるように研鑽を積みたいと思います。地方ではなかなか依存症当事者の方と組んで講座を開くことは難しいかもしれませんが、今回出会った仲間とコラボできる日を目標に頑張りたいと思います。

●社会福祉協議会職員(千葉)
この研修では、依存症に関する「正しい知識」を広め、回復のプロセスを体感し、予防に欠かせない「ライフスキル」を伝える専門家である「依存症予防教育アドバイザー」を養成・認定しています。
そのアドバイザーとして一歩を踏み出すための学びの場に参加できたことは、大きな喜びでした。
この講座の魅力は、アルコール・薬物・ギャンブルなど、多岐にわたる依存症に焦点を当てていることです。
さらに、当事者・家族・支援者が一堂に会し、それぞれが対等な立場で意見を交わし、学び合える環境が整っている点も特筆すべきところです。参加者が単なる受講者ではなく「リソースそのもの」としてお互いに価値を生み出す関係性が、ここでは実現されています。
私自身、この講座に前向きな気持ちで学びに集中できました。
講座では、ASKが長年培ってきた豊富なデータや知識を惜しみなく提供していただき、依存症に対する理解が一層深まりました。
さらに、多様な背景を持つ仲間たちと出会い、久しぶりに再会した友人たちとも語り合うことができ、とても充実した2日間でした。
また、開催場所である浅草橋駅近くの東京文具共和会館も素敵な場所でした。窓から柳橋の景色を見下ろしながらの学びは、非日常的で心が躍るようなひとときでした。
この経験を活かして、依存症の予防や支援に貢献していきたいと強く思っています。これからも、自分なりに歩みを進めていきます!

●記者(東京)
全国様々な場所から当事者や支援職など様々な立場の人が一堂に集まり、互いから学ぼうとするリスペクトをもった姿勢で、2日間みっちり時間を過ごすことができてよかったです。講義の濃密さはもちろんですが、休み時間にほんの数分ずつでも皆さんとご挨拶してお話しができ、それぞれの問題意識や悩みを聞くことができたのは、共通の思いをもっているこの場だからこそできることだと思いました。
理論だけではなく、実体験やロールプレイで落とし込めるようにしていただいたのも、理解の助けになりました。特に報道機関においては事件取材をはじめ、取材のなかで依存症に全く触れないということはどの記者もあり得ないのかなとも思いますので、記事で報道をすることはもちろん、社内外の記者向けにも学んだことを伝えられるようがんばりたいと思いました。